財政再建という大義名分のもとに、大阪府の博物館などの文化施設を廃止・売却・統合する橋下徹大阪府知事の反文化的政策に反対します。
橋下知事は、大阪府立の諸施設のうち、中之島図書館と中央図書館以外の施設は不要と発言し、本年六月までに検証を行い、必要性のないものは廃止・売却を進めると聞いております。選挙公約の中に「府が保有する公共施設は年間25億円もの赤字を生み出しています」という文言がありますので、赤字がその理由であることは明白です。
そもそも博物館に代表される文化施設は赤字経営が原則です。「博物館とは,社会とその発展に寄与することを目的として広く市民に開放された営利を目的としない恒久施設であって,研究・教育・レクリェーションに供するために,人類とその環境に関する有形の物証を収集し,保存し,調査し,資料としての利用に供し,また展示を行うものをいう」と国際博物館会議(ICOM)の定款第3条にあります。この定款では、博物館施設は利益をあげない施設であり,かつ恒久的な施設であることが明確です。この理念は,我国の博物館法にも存在しており,次の条文があります。
(入館料等)
第23条 公立博物館は、入館料その他博物館資料の利用に対する対価を徴収してはならない。但し、博物館の維持運営のためにやむを得ない事情のある場合は、必要な対価を徴収することができる。
財政赤字が多大だから、文化施設を含めた公的施設をすべてゼロベースで見直すという手段は、常識の無い安易なものであり、政策と呼べるものではありません。大阪府の財政赤字の主原因を解明して、対策を講じるべきです。
さらに、文化施設の評価をめぐる最近の傾向として、収支額と入場者数だけでなく、経済波及効果・社会便益性・文化意識に対する役割、経済的効果・文化的効果・社会的効果の合計を考慮すべきであると言われています。また、大阪府内においては、大阪市が市内で、大阪府が主に周辺市町村で、文化施設を展開・維持しており、諸文化施設が都市創造に果たした影響も多大です。大阪府内における文化施設の総合的評価を厳密にお願いします。
橋下知事が発表した改革ビジョン「大阪維新プログラム」は、「明治維新」を参考にしていると思われます。明治維新においては、開国により、欧米諸国の最先端の学問を担う多くの人材を、高額な報酬で雇った事実があります。教育と文化に対する投資政策が、我国の国際的地位向上と経済発展につながりました。文化と教育をないがしろにした自治体に未来はありません。関西復権を担う大阪府においても、一時の財政赤字を理由に、歴史のある貴重な文化施設を廃止・売却・統合してしまうことのないようにお願いします。
以上の見地から、大阪府の博物館などの文化施設を廃止・売却・統合する橋下徹大阪府知事の反文化的政策に反対します。
2008年4月10日
大阪府知事橋下徹殿
大阪府教育長綛山哲男殿
大阪府議会議長岩見星光殿
昆虫担当学芸員協議会
このニュースに関係した公開ファイルが次にあります。
「橋下大阪府知事の反文化的政策に反対する」声明文の公開ファイル
http://www.mus-ent.jp/modules/pukiwiki/?hashimoto
関連したリンクは次のURLです。
訪問大阪府の博物館をみんなで支援しよう!
http://www.mus-ent.jp/modules/mylinks/singlelink.php?lid=16
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