昆虫担当学芸員協議会
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昆虫担当学芸員協議会ニュース

(詳細)
タイトル: 昆虫担当学芸員協議会ニュース17号
投稿者: kana
日付: 2008-9-2(火)
時刻: 00:00
閲覧数: 12073
内容
昆虫担当学芸員協議会ニュース17号のテキスト部分です。末尾にpdfファイルをつけておきます。
公開シンポジウム「2050年の博物館」・第16回昆虫担当学芸員協議会総会の報告

 本協議会と日本昆虫学会第67回大会実行委員会が企画・共催した公開シンポジウム「2050年の博物館」が、神戸大学における日本昆虫学会第67回大会瀧川記念会館で、2007年9月17日(月祝)13:00〜15:30に開催された。博物館に対する最近の短期的な逆風をはね返すために、全機能を対象として若いスピーカーに21世紀半ばの博物館像を模索してもらうことを目標とした。約120名の参加者を得て、若手を中心とした4組の演者の講演があり、活発な意見交換が行われた。
 また、その後に本協議会の第16回総会が、C会場で16:00〜18:00に小集会の形で開催された。総会のテーマは特になく、公開シンポジウム「2050年の博物館」の続編として位置づけられ、二組の話題提供が行われた。その内容については、本号に詳しく報告していただいたので、ご参照願いたい。参加者は27名であった。総会終了後には、恒例の懇親会を会場近くで行った。話題提供のテーマの決定、会場の手配、懇親会の準備などで八木 剛氏に誠にお世話になった。お礼申し上げる。

総会参加者(50音順)
 上田恭一郎(北九州市立自然史・歴史博物館),碓井 徹(埼玉県立自然の博物館),金沢 至(大阪市立自然史博物館),金杉隆雄(ぐんま昆虫の森),金子順一郎(群馬県沼田市),川上 靖(鳥取県立博物館),桑原大樹(日本農薬株式会社),古山 暁(橿原市昆虫館),西城 洋(大阪府営箕面公園昆虫館),四方圭一郎(飯田市美術博物館),篠原明彦(国立科学博物館),鈴木 武(兵庫県立人と自然の博物館),箭内 緑(マダガスカル・チンバザザ動植物公園),多田内修(九大・農学研究院),中西明徳(兵庫県立人と自然の博物館),中村剛之(栃木県立博物館),平田慎一郎(きしわだ自然資料館),福谷美智(大阪府立大学大学院),桝永一宏(滋賀県立琵琶湖博物館),松尾信彦(広島市森林公園昆虫館),松本吏樹郎(大阪市立自然史博物館),三島美佐子(九大・総合研究博物館),三田井克志(九大・農・昆虫),宮武頼夫(関西大学),宮野伸也(千葉県立中央博),八木 剛(兵庫県立人と自然の博物館),吉村正志(九大熱帯農学研究センター).

昆虫担当学芸員のオランダの自然史博物館研修報告
― 研修館の紹介とそこで見たコレクション管理に関する館外研究者との協力関係について ―

中村 剛之
(〒320-0865 栃木県宇都宮市睦町2-2 栃木県立博物館)

はじめに
 博物館はそれぞれ独自の歴史と活動目的を持ち,「博物館」と一つにくくられる施設の中でもそれぞれの取り組みは千差万別である.そこで働く学芸員にとって,他の博物館から学ぶことは多く,他館を訪問し,多くの学芸員と意見を交わすことは博物館活動の質の向上のために欠くことができない.しかし,それぞれの博物館の歴史やそれを取り巻く環境,関係者の意識など,博物館活動のバックグラウンドとなっている諸事情を短時間の訪問で感じ取ることはなかなかできない.ましてや外国の博物館ともなるとなおさらである.
 文部科学省では博物館・美術館などに勤務する学芸員を海外の博物館・美術館に派遣し,それぞれが設定したテーマで1〜数カ月の研修を行う「学芸員等在外派遣研修」という制度を設けている.平成18年度,私は周囲の方々の協力のおかげで,4か月以上の長期にわたってこの研修に参加することができた.「学術研究と環境教育を目的とした自然史系リファレンスコレクションの構築と利用」というテーマで,オランダの幾つかの自然史博物館において,自然史系コレクションの効率的な収集と利用しやすいコレクションの管理手法を学んだ. 
 今回の研修の中心となったアムステルダム大学動物学博物館昆虫部門の概要についてはすでに中村(2008)で紹介しているが,ここで改めて紹介し,そのうえで,膨大なコレクションの収集・管理を可能にしている博物館と協力者との関係,それを保つための取り組みについて解説する.

アムステルダム大学動物学博物館 (ZMA)
 アムステルダム大学動物学博物館(Zoölogisch Museum, Universiteit van Amsterdam,またはthe Zoological Museum of Amsterdam,以後ZMAと略記)はアムステルダム大学の理学部に付属し,脊椎動物,無脊椎動物,昆虫,展示,生物情報学の5部門に分かれている.収蔵資料は動物標本1300万件.資料数と博物館の歴史において,オランダ国内でライデン自然史博物館(Naturalis, Leiden)と双璧をなすヨーロッパ屈指の自然史系博物館である.
 この博物館は大学の付属施設という性質上,資料の収集保管と収蔵資料をもとにした学術研究が活動の中心である.小さな展示スペースをアムステルダム市内の動物園の中に持っているが,展示や子供たちへの普及教育活動にはあまり熱心ではない.この点では特殊な性格の博物館といえる.
 現在の博物館は専用の建物を持たず,部門ごとにいくつかの建物に分かれて大学本部近くのアムステルダム市内に点在している.ZMAでは,博物館の中心はあくまでもコレクションとスタッフであり,建物はコレクションを収容する入れ物に過ぎず,あまり重要視されていないという印象を強く受けた.これはZMAが展示に力を入れていないことも一因だが,さらにもう一つ,この博物館特有の事情がある.ZMAはこれまで,収蔵資料が増えて建物が手狭になるたびに,適当な大きさの建物へとヤドカリのようにコレクションを移してきた.第二次世界大戦の期間には使っていた建物がドイツ軍の接収にあい、コレクションごと追い出されたという過去もある。昆虫部門が現在の場所におさまったのは1970年代のことだが,古い街並みが保存されているアムステルダム市内では移転の度に新たな建物を建築するわけにはいかず,既存の建物に間借りするほかない.このような事情が箱モノとしての「館」を重要視しない意識を生んでいるのかもしれない.
 昆虫部門の建物は,表から見ると何の変哲もない古く小さなレンガ造りの建物である(図1).目立った看板もなく,周囲は一般のオフィスや美容院,住宅に囲まれているため,一見ではそれと分らない何とも地味な施設である.入口には常に鍵がかかっているものの,警備員もいない.表から見える部分は入口と事務室部分であり,収蔵庫と書庫はこの奥につづいている.日本の博物館では考えられない状況だが,博物館の建物が周囲の建物とつながっているために壁を一枚隔てた隣,あるいは研究室の上の階には博物館とはまったく関係のない人々が居住しており,朝夕などは子供の駆け回る音が大変耳障りであった.
 昆虫部門は約20名のスタッフからなる.内訳は学芸員2名,コレクションマネージャー2名,技師及び研究者数名,事務員2名,司書2名,データベース入力の作業員,大工(建物の修理から標本箱の加工まで行う),イラストレーター,掃除夫などである.各々の職員の業務分担がはっきりとしており,この中でコレクションの管理に責任があるのは,学芸員とコレクションマネージャーの4名である.学芸員は収集方針や部門の運営・活動を統括し,自らの研究と学生の指導を行う.コレクションの実質的な管理は主にコレクションマネージャーと技師の仕事で,学芸員はほとんど手を出すことがない.

図1 アムステルダム大学動物学博物館昆虫部門.中央のレンガ造りの建物.正面は小さいが収蔵庫と書庫は建物の奥へと続いている.

ZMA昆虫部門における資料収集と管理
 昆虫部門では全世界の昆虫およそ800万点を収蔵している.収蔵庫は液浸収蔵庫(水生昆虫や多足類など)と乾燥標本の収蔵庫に分かれ,中心となる乾燥標本の収蔵庫にはおよそ4万箱の標本箱が整然と並べられている(図2).
 ZMAのコレクションは標本の数もさることながら,分類整理が行き届いていることでも知られている.世界中から標本を集めているにもかかわらず,7割以上の標本が属あるいは種のレベルまで同定され,しかるべき箱におさまっている(図3).収蔵庫における標本の配架は大型の鱗翅目やカブトムシ類のような体が大きく他の昆虫類と同一規格の箱では整理しにくい昆虫を除き,全て目ごとにまとめられている.鞘翅目,鱗翅目,膜翅目,双翅目などの大きな分類群では,収蔵標本は管理と利用者の便を図って,@オランダ国内産,A旧北区産,B東洋区・オーストラリア区産,Cエチオピア区産,D南米・北米産の順に配列されている.コレクションはオランダ国内を含む旧北区,旧植民地由来のものが特に充実している.分類整理の順序では,各目の中の科や属,種の配列にはそれぞれの基準が設けられている.例をあげると,旧北区の甲虫はWinkler (1924-1932) ”Catalogus Coleopterorum regionis palaearcticae(旧北区甲虫目録)”,オランダの甲虫はBrakman (1966) ”Lijst van Coleoptera uit Nederland en het omliggend gebied(オランダと周辺地域の甲虫目録)”の掲載順に従っており,属や種がアルファベット順に並べられている分類群もある.標本箱の内容は箱外側のラベルに記載されていて利用者が目的の標本を見つけやすいように配慮されている(図2).タイプ標本にはそれとわかるラベルが付けられているが,分けて管理されることなく一般の標本と一緒に収蔵されている.
 コレクションは寄贈,採集,交換によって収集されたもので,現在は寄贈が資料収集の中心となっている.昆虫部門では毎年5万点を超える寄贈を受け入れている.
 これまでに個人から寄贈された巨大なコレクションとしては,ドイツの脳・神経外科の権威だったOskar Vogt 博士(1870-1959)のマルハナバチ(約60万点)と甲虫(約10万点)のコレクション(1960年入手)やJ. M. A. van Groenendael医師(1896-1980) のインドネシア産鱗翅類コレクション(およそ100万点,おそらくインドネシアの蛾類コレクションとしては世界最大,1980年入手)などがある.1980年代には博物館の協力者が採集のために来日しており,日本国内で収集された標本も多数収蔵されている.
 博物館職員の採集による収集も盛んで,ヨーロッパ各地,アフリカ,インドネシアなどで調査,収集を行っている.
 昆虫部門では博物館が野生動物の商取引を助長するべきでないという方針から,標本資料の購入は行っていない.もちろん資料購入の予算も付いていないが,職員はその必要性を感じていないようであった.これは展示部門を重要視していないこの博物館特有の事情かもしれない.
 また,昆虫部門で特筆すべきはオランダ昆虫学会(Nederlandse Entomologische Vereniging)の蔵書を管理していて,文献資料が大変充実している点である.世界中の昆虫学関連の文献(書籍21000冊,雑誌4400タイトル,別刷り類10万点)が集められ,書架の総延長は2.2kmにも及んでいるという.滞在中,学生のゼミにも参加したが,日本では手に入りにくい雑誌の記事や18世紀,19世紀の文献を次々と引用して議論する様を目の当たりにすると,日本の研究者が負っているハンディキャップを感じずにはいられなかった.
 模式標本や分類整理が進んでいる蝶類などの標本では,資料情報のデジタル化が進められている.作業員は4〜6人.一人の作業員が一日に平均180〜200点の標本を処理し,全体で年間10万件ほどの情報を入力している(図4).この事業には特別な予算が付けられており,作業員の人件費はこの予算から賄われている.入力作業はすべてこれら作業員が行い,学芸員とコレクションマネージャーは入力作業の方針を決めることと作業員の指導,情報があいまいな標本の入力内容の確認などを行っている.私も研修中,一週間ほどデータベースの入力作業をおこなった.栃木県立博物館で作成しているデータベースに比べて入力項目が多く,大変に煩雑な作業と感じた.作業上最も障害となるのは標本ラベルの解読で,古い標本は手書きのものも多く,様々な言語で書かれているので,文字の判読が難しい.その上,コレクションの中には世界各地の地名が見られること,時代によって国境や地名が変わることがあること等の事情から,地理,歴史の知識も必要とされた.ZMAでは入力情報の質をいかに保証するか,現在分類群ごとに複数存在するデータベースをどのように統合するかといったことが大きな課題となっていた.

図2 乾燥標本の収蔵庫.およそ4万箱の標本箱が整然と並び,箱の外には内容を示すラベルが付いている.

収蔵庫環境と防虫管理
 昆虫部門では収蔵庫に空調設備を持たず,温度調節にはセントラルヒーティングによる暖房が用いられている.冬季,雨や雪の多い地域でありながら(滞在中,雪はほとんど降らなかったが),どういう訳か室内は適度な乾燥が保たれ,カビの害もほとんど見られない.
 古い標本箱の多くは質が悪く,板の継ぎ目に隙間があるような粗悪な箱も少なくない.近年では質の良い箱を用いるようになり,この点は改善されている.古い標本ではチャタテムシ類などの食害を受けているものも散見されるが,現在は虫の害はほとんど認められないとの話であった.
 防虫対策はもっぱら標本箱内の防虫剤(ナフタレン)に頼っている.新着標本の受け入れ時と害虫が発生した時に薬剤を使った燻蒸を行っているが,収蔵庫全体を対象とした大規模な燻蒸は行われていない.もっとも,建物に隙間が多い上に,前述のように壁一枚隔てた隣には博物館とは関係のない人々が住んでいるので,薬品を使った全館燻蒸は技術的に不可能なのだと思われる.現在のオランダ国内では薬剤を使った自然史系博物館資料の燻蒸は廃止する方向にあり,研修期間中に訪れたライデン自然史博物館,オランダ国立植物標本館(the National Herbarium Netherlands)ではすでに薬剤処理や防虫剤の使用をせず,資料の低温処理による殺虫が行われている.
 防虫対策で興味深かったことは室内における誘蛾灯と電撃殺虫器の使用である.日本の博物館では,誘蛾灯から出る紫外線と捕虫時に発生する火花を嫌い,ほとんど用いられていないと思われるが,オランダでは,害虫の発生を早期に発見するのに有効だと考えられており,オランダ国立植物標本館では貴重資料(シーボルトの植物標本など)を収蔵する部屋にも電撃殺虫器が設置されている.
 昆虫部門では掃除夫が一人配置され,常に収蔵庫内を掃除して回っている.ゴミの回収や床の清掃はもちろん,標本箱のガラス一枚一枚を拭いてまわっているため,収蔵庫内が大変清潔に保たれている.虫害,カビ害の発生を低く抑えることに一役買っていることには疑いの余地がない.

図3 標本の分類整理の様子.世界中の昆虫を収集しているにもかかわらず,7割近い標本が属や種のレベルまで分類整理されている.

コレクション管理と協力者
 コレクションの管理(標本の作成から整理,保存,活用に供するまでの全過程)は何か新しいシステムを導入すれば飛躍的に効率が上がるという性格のものではない.作業者には技術と知識の習熟が不可欠であるし,何より人手と時間と費用を必要とする作業である.ZMA昆虫部門では,スタッフとしてこの作業にかかわるのは実質的に2人のコレクションマネージャーと数人の技師だけだが,この人数でいかにして800万点もの昆虫標本を整理し,コレクションを維持できるのであろうか.限られた人員と予算の中で,膨大なコレクションをいかに構築し,維持管理し,利用に供するかはこの研修の大きなテーマの一つでもあった.
 コレクション管理には職員だけでなく,10名ほどいる名誉職員(退職した職員や国内外の専門家たち)とRegular visitorsと呼ばれる数十人の協力者(プロ,アマチュアの研究者,愛好家)が大きな役割を果たしている.こうした人々はコレクション管理のために博物館への出入りを許されている訳ではなく,それぞれ専門の分類群を持ち,自らの研究のために博物館の資料を利用している研究者である.日常的に博物館に出入りしており,職員に準じた扱いを受けているので,外見的には職員との区別はできない.
 こうした人々を受け入れている背景には,収蔵コレクションを専門家に利用してもらい,多くの研究成果を出すことで,コレクションの価値を高めるという博物館側の狙いがある.コレクションの価値を評価する上で,資料の数と多様さ,管理状態と保存状態にくわえ,コレクションからどれだけの研究成果が得られているかという点が重要視されているのである.しかし,このような協力者の貢献は研究面ばかりではない.彼らは博物館の標本を自分の研究で活用するかたわら,専門とする分類群の標本を整理し,コレクションに欠けている部分を持ち寄り,補ってゆくのである.研究者にとって博物館資料を自分なりに分類し整理する過程で得られる情報は貴重なものであるはずだし,大量の標本資料があっても整理されていなければ自分の研究に役立たないという一面もあるのだろう.中には,自宅(あるいは自らの研究室)には標本を置いておらず,プライベートな収集によってえられた標本のすべてをこの博物館のコレクションに統合していて,標本を使った研究はすべてこの博物館で行うという研究者もいる.彼らは博物館資料の調査や研究を通して一方的に情報を引き出すだけでなく,自分の専門知識を使って博物館のコレクションを整理し,充実させることも自らの役割のように考えているようであった.コレクションの活用(利用者にとってのメリット)と管理(博物館にとってのメリット)がかみ合った二つの歯車のように機能し,博物館と研究者の間に持ちつ持たれつの良い関係が築かれている.
 このような関係は博物館の長い歴史の中で培われたものであることは間違いないが,博物館スタッフはこの関係を保つためにどのようなことを行い,どのような意識で取り組んでいるのであろうか.以下,この点についてまとめた。

図4 データベースの入力作業.作業は単純な入力作業だけではない.世界中の標本ラベルを読み解くためには言語,地理、歴史などの知識も必要となる.

コレクション管理者の意識
 日本の自然史系博物館では,コレクション管理のほとんどを少数の職員だけで行っている場合が多い.その上,学芸員が展示や普及教育活動を優先するために,コレクションの管理がどうしても手薄になりがちである.
 ZMAでコレクション管理の直接の責任者であるコレクションマネージャーに日本の博物館の取り組み方を話し,オランダにおける博物館と協力者との関係について尋ねたところ,「世界に数十万種もいる昆虫を少数の学芸員で分類整理できるはずがない.自分が専門とする分類群以外の昆虫の同定や整理に時間をかけるのは全くの無駄であり,それをするのは専門家の仕事である.博物館にとって専門家の協力は欠かすことができず,コレクション管理で大切なことは協力してくれる研究者にとって利用しやすい環境を作ることである」と話してくれた.専門家でもない者が無理に分類同定をおこなおうとすると時間ばかりかかる上に間違いも生じやすいと考えているようである.実際,コレクションマネージャーの作業を見ると,それぞれが専門とする分類群の同定作業の他は,科や属などへの大まかな分類作業,専門家による同定標本の分類と配架をおもに行っているようであった.ボランティア精神に富んだ協力者でも全く手を加えられていない雑然とした資料を整理するのは苦痛だろうし,同定分類した標本資料をそれぞれの箱に分けてゆく作業も面倒なものだろう.コレクションマネージャー等のスタッフはこのような作業を分担することで協力者の負担を軽減するよう努めているようであった.
 昆虫部門では,研究者の利用を促すために様々な会合や勉強会が頻繁に行われている.研修期間中にも2週に一度は何かしらの会合が催されていた(図5).その上,秋から春にかけては月の第3土曜日に収蔵庫と図書室が研究者・協力者向けに公開されていた.ZMAは通常土日が休みであり,別の職を持つ協力者の多くはウィークデーに来館することが困難である.この公開日はこうした人たちのために行われているもので,担当する職員は当日無給のボランティアである.この公開日にはオランダ各地,さらには隣国ベルギーから毎回30人ほどの研究者が集まり,各自思い思いに標本の調査や整理を行う(図6).中には1日中お茶を飲みながら雑談して過ごす者もあるが,参加者は皆誰に指示されるわけでもなく楽しげに作業を進める.その様子は実に壮観であった.この日1日の全体の作業量は博物館のスタッフが1月の間にこなす作業量にも匹敵するもので,寄贈資料もこの日に持ち込まれることが多い(図7).当番のスタッフはこの日はホスト役に徹して,茶菓の用意をしたり,参加者の話し相手になったり,必要な用具をそろえたり,寄贈資料を受け入れたりと大忙しである.
 しかし,このように多数の外部研究者をコレクションに直接アクセスできる形で受け入れて,資料の破損や紛失などコレクションへの悪影響はないのだろうか.ZMAの館長であり昆虫部門の学芸員でもあるS. Ulenburg博士によると「もちろん,我々は誰彼となく受け入れているわけではなく,コレクションを管理する立場にある学芸員とコレクションマネージャーが協力者の専門知識や技術を評価して受け入れの可否を決めている.多くの研究者を受け入れることで資料の破損や紛失(盗難?)という事例もないわけではないが,現在のコレクションが彼らの協力によって築かれ成長してきたことを考えると,こうした問題は軽微なものであり,受け入れなくてはいけないリスクである.適切な協力者に対してコレクションの管理をオープンにすることは効率よい管理にとって肝要である」という.
 さらに,この博物館のスタッフは館外協力者の個人的な収集活動を推奨し積極的に支援も行っている.博物館で使わない標本箱(寄贈の受け入れ時などに持ち込まれる)を協力者の個人的な収集のために提供したり,国外に採集に出る協力者へ様々な情報を提供するなどしている他,時には国外の研究者との資料や情報の交換の仲介なども行っている.個人のコレクションは博物館にとって重要な資料収集源(寄贈元)であるから,個人の収集活動を援助し,活性化することは長い目で見ると博物館にとって大きなメリットとなると考えているようである.

図5 博物館で行われる研究者の集会.オランダ昆虫学会甲虫部会.参加者の多くが博物館の協力者である.

図6 冬の間,月に一度行われる公開日.30名ほどの研究者がオランダ国内ばかりか隣国ベルギーからも集まり,各自思い思いに資料調査,分類整理,写真撮影などを行う.

この研修に参加して
 この研修を通して,博物館資料の収集・整理,コレクションの管理が時間と人手を食う仕事であることを今更ながらに再認識した.そして,限られた人員と予算の中で効率よい管理を進めるためには外部研究者の協力が不可欠であることを学んだ.私はこれまで,収蔵資料の管理はあくまで博物館職員の仕事であり,外部研究者による資料の活用は全く性質を異にするものと捉えていたが,両者が強くリンクしうるものであることを学べたことは今後の博物館活動に大いに役立つものと思う.さらに,4ヶ月半という長期にわたって海外の博物館のコレクション管理を学ぶ中で,この作業にかかわる学芸員やコレクションマネージャー,外部協力者がもっている博物館やコレクションについての考え方を知ることができた.当初計画していた管理の技術的な手法ばかりでなく,博物館とそれを取り巻く人々の雰囲気を肌で感じ,関係者の意識についても学ぶことができたことは大きな成果だと思う.
 研修期間に訪れた博物館は,日本国内の一般的な博物館に比べていずれも規模が大きく,博物館活動の目的も異なることから,学んだことをすぐに自分の勤務する博物館に適応することは難しい.しかし,今回の研修で学んだもっとも重要な点は館外の研究者との協力関係の大切さである.コレクション管理のためだけでなく,情報の集積と発信のためにも,館外の研究者にとって利用しやすい環境づくり,コレクションの公開と利用の促進を進めてゆきたい.また,しばしば子供対象とばかりなりがちな自然史系の普及教育活動の対象年齢の幅を拡大し,地域の自然愛好家の裾野を広げ,専門的な知識や技術を伝える活動を進めたいと考えている.
さらに,今後も機会を見つけては,国内外の様々な博物館を訪れて学芸員やコレクションマネージャーと交流をはかり,コレクション管理,活用について知識を深めてゆきたいと考えている.

引用文献
Brankman, P. J. 1966. Lijst van Coleoptera uit Nederland en het omliggend gebied.
Monografie van de Nederlandse Entomologische Vereniging 2: i-x, 1-219.
中村剛之.2008.アムステルダム大学動物学博物館昆虫部門.昆虫と自然 43 (3):34-36.
Winkler, A. 1924-1932. Catalogus Coleopterorum regionis palaearcticae. Albert Winkler, Wien. 1707p. (part 1, 1924 - part 13, 1932).


「種情報データベースの構築と利用2」
アジア産農林害虫・有用昆虫の種情報の体系化・ネットワーク化と分散検索システム2

多田内 修(九州大学大学院農学研究院昆虫学教室)
金沢 至(大阪市立自然史博物館)        

 この講演は、2006年の本会総会における講演「アジア産農林害虫・有用昆虫の種情報の体系化・ネットワーク化と分散検索システム」の続編であり、「種情報データベースの構築と利用」における講演内容の復習から始め、最近の情報を盛り込みながら、XMLデータベースの仕様に関する提案を行った。

データベース化
 本誌において友国・篠原(2007)は、国立科学博物館におけるデータベース(以降DBと表記)の構築について報告した。1980年代に始まったDBの構築だが、予算がつき始め、「2001年に独法化したことで,データベースの構築は著しく加速した。このようにして構築されたデータベースは,現在,当館のホームページで公開されており,その総数(タイトル数)は56本,レコード数は約89万件(未公開分を含めると約150万件)になっている.博物館のデータベースであるから,その多くは標本を対象にしたものであるが,文献,分布,種目録,画像,測定値など多岐にわたっている」とのことである。
 また、最近の新設館では、大規模なシステムが最初から導入される事例がある(中原,2007)。佐賀県立宇宙科学館は,1999年に開館した県立の自然科学系文化施設である。資料のDB化に使用されているソフトウェアはオラクルであったが、登録は難しく、熟慮の結果、当時評判のよかったファイルメーカーで標本のDB化を進めることにした.その理由は,オラクルのデータの取り込みの際にエクセルを経由して変換が可能なこと,また、標本画像の貼り付けが簡単であったことである。それが後に幸いした。佐賀県の4つの文系博物館施設で収蔵品をインターネットで検索・閲覧できる「SAGAデジタルミュージアム」のシステム構築が始まり、元データがファイルメーカーにもとづくデータと決まったため,遅れて事業に参加したため作業が難航するはずの同館が,もっとも早く作業を完成させることになった。このシステムは,2005年8月から運用されている。
 以上のように、パソコンとDBソフトの普及により紙媒体の電子化が進み、HPによるデータ公開、データベース検索などが実現されてきた。さまざまな研究用標本の情報検索ができるポータルサイト「サイエンスミュージアムネット(S-Net)」も運営されている。2006年の時点で、16機関の約30万件のデータが集約されている。さらに共通仕様の検討が行われてきつつある。

GBIFの推進
 GBIFは生物多様性情報の収集と公開を目的としており,種情報のDBの構築を計画している。「生物多様性に関する情報は,生物科学をはじめ様々な分野で必要とされるようになっている.そのため,利用者が網羅的かつ短時間に情報を収集し活用することを目的として,インターネットなどの情報技術を用いた,生物多様性情報の収集・検索システムの構築が進められている」(神保,2007)これまでの生物の情報は、民間の出版社から刊行されてきた様々な図鑑や書籍、学会・同好会が出版する学術雑誌などに含まれてきた。そして、それらの情報を蓄積してきた分類学という学問は、最近の我国のアカデミズムにおいては、存在基盤を失いつつある。しかし,分類リスト(カタログ)や図鑑などの分類学的情報は、学問の基礎であり、産業発展のためのインフラと位置づけるべきであり、国が税金を使って整備すべきものであろう。その意味では、GBIFは歓迎すべき活動と言える。さらに、新しい活動も動き出した。

アジア産昆虫の種情報のネットワーク化・検索
 多田内を代表者とする科学研究費補助金基盤研究(A)「アジア産農林害虫・有用昆虫の種情報の体系化・ネットワーク化と分散検索システム」(課題番号:18208006、期間:平成18〜20年度)が採択され、総勢約20 名のプロジェクトが動き出した。「…昆虫類の種情報の体系化とネットワーク化は著しく遅れ、3000 万とも5000 万とも推定される熱帯地域の昆虫類の膨大な種数とあいまって、応用研究の進展を阻んでいる。現在知られている約100 万種の昆虫はそのわずか数%にすぎず、今後熱帯地域を中心に膨大な種の昆虫が発見される可能性を残している」(多田内・金沢,2007)。その正確な同定とともに種情報の集積と体系化、利用のためのネットワーク化が必要不可欠であり、このプロジェクトの目的は次の点にしぼられた。1)種情報センターAIICの確立。日本を含む東アジア、太平洋地域産昆虫の種情報の体系化とネットワーク化を推進し、アジアでの昆虫類の種情報センターAIIC (Asian Insect Information Center)の基礎を確立させる。まず、国際的にもその構築が切実に求められている、全国の大学・国立研究機関・地方自然史系博物館等に所蔵されている、アジア産昆虫類タイプ標本のDB化を行う。2)アジアにおける昆虫種情報インフラの充実。これまで個々の研究者が蓄積してきたアジア産昆虫類に関する種情報を集積、体系化してネットワークを介して国外を含む一般研究者に広く公開し、アジアにおける昆虫種情報インフラの充実をはかる。それぞれの専門とする分類群のDBの構築を開始し、将来分散されたサーバ上から同時に公開することにより、より広範で強力なアジア産昆虫種情報の発信基地をめざす。3)検索システムの確立。すでに各研究機関で蓄積された多様な書式のデータを検索するための柔軟性のある検索システムを新たに開発して対応する。さらに、主要な研究機関にサーバを配置させて分散検索の技術を開発する。

BIODBの開発・公開
 このプロジェクトにおいて金沢は各地方博物館のデータのとりまとめを担当している。我国の昆虫の研究は、職業研究者だけでなく、多くのアマチュア研究者の貢献により進んできた。種情報の内、分布記録はアマチュア研究者や博物館の協力なしには蓄積できない。この科研費の資金を利用して、多忙をきわめる博物館職員や昆虫愛好家が、昆虫を含む小動物の標本・文献・目撃記録を簡単に入力できるDB入力支援ソフト(BIODB)を開発・公開した。このBIODBはコミュニケーションツールXOOPSのモジュールで、昆虫の標本、文献、目撃などの記録を入力して、ラベル作成や、Google Mapsを利用した分布表示ができる。昆虫を含む小動物の分類群情報(「和名」、「学名」、「門名(日本語)」、「門名」、「綱名(日本語)」、「綱名」、「目名(日本語)」、「目名」、「科名(日本語)」、「科名」)がDB(Mysql)のテーブルとしてインストールされ、和名を入力すると学名や科名などが自動入力される。小動物の分類群データは、河川水辺の国勢調査のための生物リストを使用している。科研費を使っている関係上、このモジュールのライセンスは、LinuxやXOOPSと同じくGNU GPLである。このモジュールで入力されたデータについては、著作(者人格)権は入力者にある。しかし、原則的には公開としたいところだ。特に、「種情報データべースの構築と利用−アジア産農林害虫・有用昆虫の種情報の体系化・ネットワーク化と分散検索システム」とGBIFには、データを公開してほしいと考えている。データにあてはめられるライセンスは、GNU FDLを考えている。稀少動植物や、やむを得ない事情がある場合には、非公開のボタンにチェックしていただければ、登録者と管理者以外の人が見ることができない。
 さらに、そのBIODBをモジュールとして組み込んだ、博物館用コミュニケーションサーバ「XSAS/XCP/MUS」も公開した。このソフトは、Windows版XOOPS起動セット(XPとVISTAで起動確認)であるXSASサーバに、昆虫DB構築支援モジュールbiodbや、館報などを共同編集できるpukiwikiなどの自然史系博物館に有用なモジュールをインストールしたものだ。イントラネットのWindowsパソコンで起動させておいて、他のパソコンからプライベートIPアドレスで接続し、簡単に館内コミュニケーションを取れる。

XMLとRDFの利用
 ブログなどの見出しや要約の情報をやりとりするRSS(Really Simple Syndication)が普及している。RSSはXML(Extensible Markup Language)のフォーマットの一つである。XMLは「文書やデータの意味や構造を記述するためのマークアップ言語の一つであり、「タグ」と呼ばれる特定の文字列で地の文に構造を埋め込んでいく言語のことである。XMLはユーザが独自のタグを指定できることから、マークアップ言語を作成するためのメタ言語とも言われる」(IT用語辞典)。また、RDFは情報についての情報(メタデータ)の表現方法についての枠組みである。「RDFで記述される情報は書籍における図書カタログのようなもので、コンピュータが扱う情報の分類や検索などの自動化・効率化を図ることができる。Apple社によって提案されたMCFをNetscape Communications社が買い取り、XMLをベースとしたものに改良して標準化団体W3Cに提案した。1999年2月に正式な勧告となった」(IT用語辞典)。このXMLとRDFを有効に利用することにより、RSSのようにデータを簡単に交換できる可能性がある。
 XMLはすでに分類学などで応用されている。表1は、公開されているサイトからダウンロードしたものである。さらに、昆虫のDB構築がとても進んでいるオランダにおいては、RDFについて表2の例がある。そこで、分布情報データの流通と相互利用のために、XMLを利用したDBの仕様を検討・公表した。これをBIODBの入力データにも応用する予定である。誌面スペースの関係で全部を載せられないので、その1例を表3に記す。

表1 XMLの一例(日本植物誌DB http://www.foj.info
フジバカマ
<family>ASTERACEAE</family>
 <subfamily>Asteroideae</subfamily>
  <tribe>Eupatorieae</tribe>
   <subtribe>Ageratinae</subtribe>
    <genus>Eupatorium</genus>
     <subgenus></subgenus>
      <section></section>
       <subsection></subsection>

表2 RDFの一例(SECTIE HYMENOPTERA van de NEV http://www.nev.nl/hymenoptera/
<rdf:Description rdf:about="#chryignitasparse">
<linnaeus:specificEpithet>ignita</linnaeus:specificEpithet>
<linnaeus:infraspecificRank>var.</linnaeus:infraspecificRank>
<linnaeus:infrEpithet>sparsepunctata</linnaeus:infrEpithet>
<linnaeus:Name>Chrysis ignita sparsepunctata</linnaeus:Name>
<linnaeus:authorYear>Zimmerman, 1944</linnaeus:authorYear>
<linnaeus:country>
<rdf:Bag>
<rdf:li rdf:parseType='Literal'>Netherlands</rdf:li>
</rdf:Bag>
</linnaeus:country>
<linnaeus:synonym>
<rdf:Bag>
<rdf:li rdf:resource="#pseucarp" />
</rdf:Bag>
</linnaeus:synonym>
<linnaeus:questionableSynonym>
<rdf:Bag>
<rdf:li rdf:resource="#bethpilo" />
</rdf:Bag>
</linnaeus:questionableSynonym>
</rdf:Description>

表3 XML-DBの仕様の一例(一部省略、架空のデータ
http://www.mus-ent.jp/modules/pukiwiki/?xml-db-shiyou
1.昆虫文献の一例(一部省略、架空のデータ)
<?xml version="1.0" encoding="UTF-8" ?>
<DataSet xmlns:xsi="http://www.w3.org/2001/XMLSchema-instance"
xsi:schemaLocation=“http://www.mus-ent.jp/modules/pukiwiki/?xml-db-shiyou"
xmlns=" http://www.mus-ent.jp/modules/pukiwiki/?xml-db-shiyou">
<Specimens>
<Specimen id="2">
<Simple/>
<Institution identifier="" />
<Collection identifier="LE" />
<SpecimenItem identifier="" />
</Specimen>
</Specimens>
<Publications>
<Publication id="2">
<Simple>Copeland, H. F. (1943). A study, anatomical and taxonomic, of the genera of Rhododendroideae.
Am. Midl. Nat. 30:533-625</Simple>
</Publication>
</Publications>

2.昆虫標本の一例(一部省略、架空のデータ)
<Specimen>
<ScientificName>Bethylus dendrophilus</ScientificName>
<Superfamily>CHRYSIDOIDEA</Superfamily>
<Family>BETHYLIDAE</Family>
<VernacularName lang=“jp”>アリガタバチ</VernacularName>
<Genus>BETHYLUS</Genus>
<AuthorOfGenus>Latreille</AuthorOfGenus>
<YearOfGenus>1802</YearOfGenus>
<VernacularName lang=“jp”>アリガタバチ属</VernacularName>
<SpecificEpithet>dendrophilus</SpecificEpithet>
<AuthorOfScientificName>Richards</AuthorOfScientificName>
<YearOfScientificName>1939</YearOfScientificName>
<VernacularName lang=“jp"></VernacularName>
<Country>Japan</Country>
<InfraspecificRank></InfraspecificRank>
<InfraspecificEpithet></InfraspecificEpithet>
<AuthorOfInfraspecificEpithet></AuthorOfInfraspecificEpithet>
<YearOfInfraspecificEpithet></YearOfInfraspecificEpithet>
</Specimen>

3.昆虫標本の一例(一部省略、架空のデータ)
<Specimen>
<ScientificName>Bethylus dendrophilus</ScientificName>
<AuthorOfScientificName>Richards</AuthorOfScientificName>
<YearOfScientificName>1939</YearOfScientificName>
<VernacularName lang=“jp”>アリガタバチ</VernacularName>
<Family>BETHYLIDAE</Family>
<Locality>Kobe University</ Locality>
<VernacularName lang=“jp”>神戸大学</VernacularName>
<coordinates>135.57575225830078,34.713113593661824,0</coordinates>
<Country>Japan</Country>
  <Sex>?</Sex>
<CollDate>2007-08-04</CollDate>
<CollPerson>?</CollPerson>
<Description>?</Description>
<Reporter>?</Reporter>
<Publication>? </Publication>
<TimeStamp>
<when>2007-08-04T15:36:47.685+09:00</when>
</TimeStamp>
<Attachment>
<picture>?.jpg</picture>
</Attachment>
</ Specimen >

参考文献
GNUの説明 http://www.gnu.org/home.ja.html
GNUのライセンス http://www.gnu.org/licenses/licenses¬.ja.html
博物館用コミュニケーションサーバ「xsas/xcp/mus」
 http://www.mus-ent.jp/modules/pukiwiki/?xsas-xcp-mus
神保宇嗣・伊藤元己・上田恭一郎,2007.種情報データベースとGBIF.昆虫担当学芸員協議会ニュース(16):5-15.
河川水辺の国勢調査のための生物リスト  
 http://www.wec.or.jp/center/mizube/m¬izube-index.htm
昆虫データベース構築支援モジュール
 http://www.mus-ent.jp/modules/pukiwiki/?biodb
中原正登,2007.佐賀県立宇宙科学館におけるデータベースの構築.昆虫担当学芸員協
 議会ニュース(16):16-18.
多田内修・金沢至,2007.アジア産農林害虫・有用昆虫の種情報の体系化・ネットワー ク化と分散検索システム.昆虫担当学芸員協議会ニュース(16):2-5.
友国雅章・篠原明彦,2007.国立科学博物館におけるデータベースの構築.昆虫担当学 芸員協議会ニュース(16):15-16.


共催シンポジウムのご案内

 昆虫分類学若手懇談会からの依頼により、下記のシンポジウムを企画・共催することになりました。会員の皆様は積極的な参加をお願いします。
 シンポジウムのテーマは「昆虫分類学における昆虫標本管理の現状と課題」です。昆虫分類学の一番の基礎である標本に焦点を当て、昆虫分類研究で用いた昆虫標本の管理について、若手の分類学者と現状と課題を共有し、今後を考えていく良い機会と思われますので,当日の活発なコメントをいただきたいと思っております.

開催主旨
 昆虫分類学にとって昆虫標本は、欠くことのできない基礎であり、また、後世に伝えていかなければいけない財産である。タイプ標本を代表とした分類学研究に使われた標本は、他の研究者にも利用できる状態で保存し、後々の検証を受けられる状態にしておかなければならない。それゆえ、分類学者には用いた昆虫標本を適切に保管・管理していかなければいけないという義務を有している。
 昆虫分類学者は、博物館や大学、研究所に所属し、またはアマチュアとして分類研究を進めているわけであるが、実際、研究に用いた昆虫標本はどのように管理されているのであろうか?また、研究をリタイアされた研究者の貴重な標本は、現在どのように扱われているのであろうか?決して新しい課題ではないが、昆虫分類学者を志す若手研究者にとっては、必ず関わっていかなければいけない課題である。今回のシンポジウムでは、あえて古くて新しい課題である昆虫標本の管理に焦点をあて、現状と今後の課題を昆虫分類学者の視点に立って議論していきたいと考えている。
 まず、昆虫標本を受け入れ、保存・管理を行なう側である博物館における現状と今後の課題を、特にタイプ標本を中心とした分類学研究に使われた標本の収蔵を中心に話題提供をして頂こうと考えている。発表者としては、日々研究活動が行われている大学に所属する「大学博物館」、タイプ標本等を既に多数抱えている「大型博物館」、そして、その地方の標本収蔵を期待される「地方博物館」の3種類の博物館について、それぞれに特有な現状と課題を発表していただこうと考えている。
そして、特別な標本収蔵施設のない大学などで分類学を研究されている方に、博物館とは異なる昆虫標本管理の現状と課題についてご紹介をいただき、個人で標本を管理する際に生じる問題点などについても議論していきたい。
 また、分類学における標本管理において、昆虫よりも情報管理が進んでいるといえる脊椎動物における現状についても紹介していただこうと考えている。今後の参考になるとともに、昆虫標本管理における課題も見えてくるのではないかと思っている。
 これらの発表を通して、昆虫分類学における昆虫標本の管理の現状と今後の課題を若手昆虫分類学者の間で共有し、共に今後の昆虫標本の管理のあり方について考えていきたいと考えている。


会場:高松市幸町1-1 香川大学幸町キャンパス日本昆虫学会第68回大会D会場
日時:2008年9月16日(火)16:00〜18:00の2時間

シンポジウム:「昆虫分類学における昆虫標本管理の現状と課題」

1.丸山宗利(九大博):「九州大学総合研究博物館の昆虫標本収蔵とその展望」

2.篠原明彦(国立科博):「国立科学博物館における昆虫標本コレクションの概要と管理の現状」

3.奥島雄一(倉敷博):「地方博物館における標本資料の集積義務とその利用価値」

4.疋田 努(京大):「脊椎動物標本の保存と管理」博物館のつかい方、つかわれ方


会費納入のお願い
 同封の振替用紙で会費の納入をお願いします。年会費は1000円ですが、最近払っていない方は、まとめて支払っていただけると助かります。


第17回昆虫担当学芸員協議会総会のご案内

 今年も日本昆虫学会大会の小集会の形で総会を開催します。
 今回の総会のテーマは、「次世代に託す博物館―学芸員生活を総括する―」です。昨年の総会や公開シンポジウム「2050年の博物館」において、若手の学芸員にお話いただいたので、今回はお二人のベテランに過去の貴重な経験を紹介していただきます。日頃の学芸員生活のヒントが満載と思いますので、積極的な参加をお願いします。終了後に恒例の懇親会を行う予定です。


会場:高松市幸町1-1 香川大学幸町キャンパス 日本昆虫学会第68回大会D会場
日時:2008年9月15日(月)17:30〜19:30の2時間
話題提供:「次世代に託す博物館―学芸員生活を総括する―」

1.将来の昆虫相解明の担い手育て失敗談
高桑 正敏(神奈川県立生命の星・地球博物館) 

 昆虫相については、常にモニタリングしていく体制の維持が望まれる。とくにレッドデータ種を日頃から把握しようとすれば、各分類群の熟達者の調査なしには不可能であろう。しかし、たとえば30年後を考えたとき、それぞれの地域に昆虫相をモニタリングできる人たちは、いったいどれほど存在しているだろうか? 10数年前にそのような危機感をもった。私の勤務する博物館が事務局である神奈川昆虫談話会を見ても、すでに若い人の参加が少なくて中・高年齢化層が中心だったからである。
 このため、博物館に勤務する私としては、箱根の麓という立地を活かし、昆虫講座のやり方を変えた。横浜の神奈川県立博物館時代から感じていたことであるが,単発の昆虫観察会を開催していても、昆虫愛好者としては育たない。小学生時代は熱心であっても,中学生になったとたんに昆虫趣味から離れてしまい,音信も不通となる子が多い。もちろん、そうした子たちであっても、将来は保全など昆虫を理解してくれる側に立ってくれる可能性はあるので、そうした講座ももちろん必要である。しかし、神奈川昆虫談話会におけるように将来を考えるなら,熱心な若い「虫屋」の育成こそ急務であろう。このため、中学生になっても昆虫を続ける子を育てようと、博物館周辺を四季折々に歩いてじっさいに採集し、その標本を作成し,種名やグループ名を調べていく、付きっ切りの「連続の虫屋養成講座」に切り替えた。
 こうした10余年間の試みはどうであったか? 私たちの博物館が行ってきた昆虫講座の内容、参加者の反応や卒業生数人のその後を紹介することで、いかにすれば目的を達せられるかを模索したい。

2.発光生物研究を通した博物館活動
−市民に対する学芸員の役割とは−
大場 信義(横須賀市自然・人文博物館)

 私は32年間博物館で昆虫と発光生物部門を担当し、学芸活動を続けてきたなかで、学芸員の役割とは何か、また地方博物館の機能とはどのようなものなのかを考え続けてきた。そして、退職時にたどり着いた思いは、学芸員自身が調査研究を通し常にワクワク・ドキドキして感動すること、そのことを市民と共有することである。具体的には西表島で発見した奇想天外のイリオモテボタル、ゲンジボタルの光の方言、パプア・ニューギニアでみたホタルの木の尽きない不思議などの驚きや感動である。
 博物館のホタル観察会は毎年30年以上レクチャーを行い、自然の不思議や環境について改めて見直して頂く機会となることを目標としてきた。その結果、数千人の市民に直接語りかけ、またホタルの光の不思議を体感して頂いた。市民に伝えるべきことは、継続して調査研究を行っているなかで浮かび上がってくるホタルからのメッセージを伝えることである。
もうひとつは、地元の昆虫研究会のメンバーとともに、三浦半島の昆虫を継続して見守ることである。昆虫からのメッセージをメンバーとともに市民へ伝えることも重要な役割であると思う。


昆虫担当学芸員協議会ニュース 17号 (2008年9月2日印刷・発行) 発行:昆虫担当学芸員協議会 事務局:大阪市立自然史博物館昆虫研究室(金沢 至,初宿成彦,松本吏樹郎)
〒546-0034 大阪市東住吉区長居公園1-23
TEL 06-6697-6221(代)
FAX 06-6697-6225(代)
E-Mail kana@mus-nh.city.osaka.jp
振替口座:00920-6-138616 昆虫担当学芸員協議会

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