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昆虫担当学芸員協議会ニュース9号

Published by Kana on 2000/9/5 (3265 reads)


昆虫担当学芸員協議会ニュース 9号


第8回昆虫担当学芸員協議会総会の報告


 本協議会の第8回総会が,愛媛大学農学部における日本昆虫学会第59回大会会場で1999年9月25日(土)17:00〜19:30に小集会の形で開催された.25名という多人数の参加を得て,活発な意見交換が行われた.

 話題提供では,国立の博物館の多くが独立行政法人化される状況の中で,「直営? 第三セクター? 独立行政法人?」というメインテーマのもとに,それぞれの運営形態(一部は予定)を代表する館からメリットとデメリットが率直に報告された.「第三セクターにおける普及教育事業の問題点」を中谷憲一氏(大阪市立環境学習センター)に,「複合施設の中の博物館と,今後の問題」を大原賢二氏(徳島県立博物館)に,「独立行政法人化と博物館」を友国雅章氏(国立科学博物館)に話していただいた.3名の方にお礼申し上げる.発表内容に関しては前号に詳しく紹介されているので,参加されなかった方は前号を参照いただきたい.

 総合討論で出た主な意見を私見を交えて紹介する.独立行政法人化された場合のデメリットは,今の段階ではよくわからないというのが本音であろう.博物館はどう努力しても採算がとれるものではないので,独立採算のもとに専門職員数や調査研究事業が大幅にカットされる事態も予想される.直営で予算が潤沢にあり,入館者数もそれほど気にせず,企画点も内容重視でやっていけるのが,学芸員にとって都合がいいのだろうが,状況は悪化する一方である.また,これまで博物館の所管,規模のガイドラインとなっていた「博物館の設置運営に関する基準」が緩和され,所管が教育委員会でなくてもいい,学芸員をおかなくてもいい,というような改悪が行われた.この基準が防波堤としての役割をなくし,博物館が学芸員(専門職員)の地道な努力を元に活動するのでなく,企画展示の回数を増やすことなどで,単純に入館者増を計る事態が加速されるかもしれない.欧米の博物館に比較して,規模が小さく,収蔵品数もスタッフ数も少ない日本の博物館がますます小規模化する恐れがある.今回の独立行政法人化の問題は,いずれは地方に波及する可能性があり,「博物館の設置運営に関する基準」とともに,再考されるべき大きな問題であろう.

 なお,終了後には恒例の懇親会も開かれ,遅くまで議論が続いた.話題提供のテーマの決定,会場の手配,懇親会の準備などで大原賢二氏(徳島県立博物館)に誠にお世話になった.大原氏にお礼申し上げる.

総会参加者(50音順)

 阿部正喜(九州東海大学),江村 薫(埼玉県農業試験場),大原賢二(徳島県立博物館),奥島雄一(倉敷市立自然史博物館),大場信義(横須賀市自然博物館),金沢 至(大阪市立自然史博物館),河合正人(あやめ池自然博物館),木俣 繁(山形県立博物館),河野勝行(国際農林水産業研究センター沖縄支所),須島光昭(東大院理生物),巣瀬 司(シラサギ記念自然史博物館),友国雅章(国立科学博物館),中谷憲一(大阪市立環境学習センター),中谷康弘(橿原市昆虫館),中西明徳(兵庫県立人と自然の博物館),久松正樹(ミュージアムパーク茨城県自然博物館),平田慎一郎(大阪府立大学農学部昆虫学研究室),堀 繁久(北海道開拓記念館),三時輝久(山口県立山口博物館),前田和夫(広島市森林公園昆虫館),八木 剛(兵庫県立人と自然の博物館),八尋克郎(琵琶湖博物館),山岸健三(名城大学農学部昆虫学研究室),他2名.


横須賀の緑の回廊−森と水辺の保全にむけて−

ホタルの里づくりを通した総合学習への取り組み


大場 信義(横須賀市自然博物館)

 文部省はこれまで授業の枠を越えた総合的な学習(総合学習)を2002年から開始される学校週休二日制に併せて本格的に実施することを位置付けている。こうした背景のなかで,横須賀市内および,近隣の小中学校において既に様々な取り組みが行われ始めている。

 これまでも,類似した学習としては夏休みの自由研究などが実施されてきたが,形態的には,その多くは期間が限定され任意のグル−プ・個人単位の学習であった。こうした学習の対応は博物館ほか関連施設においても可能な限り対応してきているが,今回文部省で打ち出された総合学習はこれとはかなり広がった異なる内容であり,その在り方をめぐって教育現場からも期待ととまどいが見受けられ,博物館などの対応施設とその支援体制などが,事前に教育現場と十分な論議をすることが必要と思われる。

 ここでは,平成11年度に総合学習の一環として検討されたり開始もしくは,取り組んだ事例をあげながら,今後の課題や展望などを述べる。

1)身近な生物とふれあうことのできる水辺づくりの課題と展望

 環境改変が進むなかで,身近な生物にふれあい,新たな発見の喜びや感動する場が非常に少なくなっている現状において,もっとも大切な子供たちの五感や心を育む場を身近に取り戻すことが求められている。しかし,都市化されたなかで,昔のような雑木林や池・沼・小川などを取り戻すことは不可能に近い。そこで学校敷地内に雑木を植えて昆虫類や鳥類,水生生物などの小動植物を呼び戻すことが現実的な対応となる。従来も動物の飼育,花壇や菜園,池などの水辺が造られ,一定の効果があげられてきた。特に水辺は子供たちにとってよい遊び場所であるとともに,小生物とのふれあいの場となってきたが,水辺は完成されたものが与えられ,その維持に関しても子供たちが直接関わる機会が少なかったように思える。

 また,水辺に関心のある指導者や生徒が活動している間は大きな成果をあげているが,そうした背景が無くなると,全く振り向かれずに放置されたままとなる例も全国の事例にある。その原因としては,指導教師の個人的な努力に負うところが大きく,教師の職場移動・生徒の入れ替わりなどで引継ぎがうまく機能しないこと,さらに対象の関心の強さの程度が異なるために持続性が低いなどの課題があったように思える。

 そこで,以上の問題を解決する方法のひとつとして,学校だけではなく,地域住民や行政とも連携しながら実施することが有効ではないかと考えられる。特に,地域住民にとっては地域の学校には愛着があり,自分たちの子供たちの教育環境の向上ということだけにボランテイア活動が積極的に展開されることが予想される。地域住民は地域に根ざしているので,学校側が変化しても当初の目標は確実に引き継がれていくことが期待できる。さらに,こうしたなかに,博物館などの専門的背景を持った施設が目標やプロセスを見守り続け,適宜支援を行うことがより持続性を高め,総合学習の趣旨に沿うものになると考える。さらに,学校現場でこうした取組みが企画されたときには,学校,地域住民,行政が協議して役割分担を明確にするとともに,趣旨の共通理解を行うことが重要である。

 また,行政はこうした取組みに対して財政的な支援が必要となろう。財政難のなかで,将来を担う子供たちの教育現場の向上は,なによりも重視しなければならない。こうした投資は長い目でみたときにははかりしれない成果を生み出すものと思われ,総合学習の機会を捕らえて思いきった対応を図ることも検討の余地がある。

 以下に平成11年度に行われた横須賀市内での水辺づくりの事例をあげてみる。

a)A小学校の「ホタルの里づくり」の取組み

身近な生き物とのふれあいと環境教育をめざして,学校・地域住民・行政とが連携しながら「ホタルの里づくり」の計画が学校を主体として提案された。校庭には既存の池が活用され,トンボ類なども生息しているが,この計画では一歩踏み込んで,子供たちがわくわくする感動の場となるように,小さな水田づくりまで含めて環境再生目標を掲げた。具体的にはホタルが飛ぶような水辺づくりであり,学校,子供たちと地域住民の方々との連携により持続的な体験学習とすることを目標とした。水路や湿地の設計に当たっては博物館がこれまで培ってきた経験と専門的背景を元に,現地調査を行った。6月には実際に子供たちにホタルの発光する様子を野外で見てもらい,ホタルとそのすむ環境が子供たち自身が体感する機会となった。この体験の機会はどのような講義を行うよりも子供たちにインパクトを与え,総合学習への出発点となることが期待された。

 しかし,実施段階に入り,水辺の水源の確保や水路工事に関わる経費などにいくつかの課題があり,現在もその解決を探っている。 

b)B小学校の取組み

 市内でも残り少ない水田やホタルの群生地がある地区で自然環境を活用し,水田耕作を長年生徒に体験学習,田植えなどをしながら,身近な生き物とのふれあいの機会ともとなっている。よく手入れされた水田にはイモリやホタルなどの身近であった生き物が育ち,発見の場となっていることが自然の大切さを伝えることにつながっていると思われる。このような機会と場は市内のもっとたくさんあることが望ましいと思われ,今後とも展開されるであろう,ビオト−プづくりには是非考慮したいことである。

 学級の取組みとしては,人工的に再生された学区内の水辺(池と小川)を観察し,そこに棲む水生生物を実際に確認しながら,こうした生物が棲むためにはどのようにしたらよいのかを子供たち自身が把握することをねらいとされている学習がなされた。池の水が干上がってホタルの餌となるカワニナなどの生物が死んでしまった様子を実見し,なんとかそれらの生き物たちを救おうと汲み置きしたバケツの水を水路に流すなど,子供たちの素直な発想が見られた。また,水路の生き物の観察はただ見るだけではなく,最小限の数に絞りながらも採集して手で触れてみるなど感触を体験することも試みられた。博物館では,観察のしかたや採集による撹乱が最小にとどまるような方法を指導しながら,実施された。 立地条件やおかれた背景や特色をどのように最大限生かすかが,こうした取組みの成否の鍵を握っているように思える。また,このような学習を進める上でも指導教師の熱意が不可欠要素であることが前提となる。

c)C小学校の取組み

 B小学校とともに同地区の自然を活用した学習を進めている。総合学習へ向けて,模索する教師らが,そのひとつとして地元に群生するホタルを通して総合学習へせまろうと検討している。 このためにはホタルが生息する環境の背景がどのようなものであるのかを指導教師が把握されることが不可欠であり,この点で,博物館が支援することになった。野比において身近な生物の観察を指導教師を対象に実施して,ホタルそのものについてもその生態的な背景を知っていただいた。この上で,指導教師ら自らがホタルの観察会を子供たちを対象にして開催した。これにより,子供たちは身近な自然や生き物たちとのふれあいの楽しさを実感されたと思われる。今後は,少しづつ開拓されてきた実績を継続するにはどのような仕組みが必要であるのかを見出すことが必要とされる。

d)D小学校の取り組み

 緑豊かな丘陵を背後にした立地条件を活用してホタルがすむような水辺のビト−プづくりの計画が提案された。この計画を具体化するために,まずホタルが生息するような水辺とはどのようなものであるのかを,中心となる教師らの要望で研修会が開かれた。この研修会に対し,博物館では現地視察を行い,その適合性を調査したが,水源の確保が困難であることに加え,隣接して高層建造物があり,そこから放射される人工光の影響を遮断することが困難であるなどの点から,ホタルの里づくりには少し無理があることの見解を示した。

 しかし,校庭の一角に雑木を植えて昆虫類の里もしくはインセクタリウム(昆虫園)にすることは可能であるとした。与えられた条件のなかで,最大の特徴を出すことを常に念頭におきながら,ビオト−プづくりが推進されることが重要である。ビオト−プは水辺ばかりでなく,雑木林や原っぱでもよい。砂浜,岩礁地も対象となる。生き物たちが行き来できる緑の回廊や水辺のネットワークを創造ずることが大切であり,そうした意味で総合学習を通して,全市内の小中学校の敷地内に,立地条件や特徴を生かしたビオト−プが創出される意義が大きい。このようなビオト−プづくりを通して,地域住民と学校,児童のコミュニケ−ションが良好となり,協働型の総合学習へと進展可能と考えられる。

e)E小学校の取り組み

 横須賀市の非常用水源となっている湧水地に立地する特徴を生かした「ホタルの里づくり」の総合学習の取り組みが開始された。この構想は子供たち自らが提案したことである。

 しかし,その背景には学校側の子供たちへの働きかけがあってのことである。働きかけの第1歩として,まず水辺の大切さや楽しさ,生き物との触れあることの感動などを体感してもらうことが最良であるという考えの元に,自然教育園においてヘイケボタルの観察会が実施された。この観察会を通して,子供たちはホタルがどのような生き物であり,どのような環境に棲むものなのか,またホタルが放つ光の魅力を感じたに違いない。この観察会を通し,子供たちから「ホタルの里づくり」が提案された経過がある。

 このような子供たちの気持ちを尊重する形で,指導教諭らの熱意と実行力によって早速,水辺づくりが具体化された。

 水源は井戸水をくみ上げて確保することとした。水路の設計段階では博物館のこれまでの体験からアドバイスして,長期的な取り組みとして学校と地域住民,行政が連携して推進することとした。ホタルの里づくりは,ホタルを発生させれば成功といった発想ではなく,そのプロセスを重視し,児童や地域住民,学校がどのような関わりを持ち,よい方向を探り出して継続して行くかに視点をおいている。しかし,実施段階になったときに,工事経費が課題となって一時足踏み状態を余儀なくされた。そこで,不完全ではあるが,親子と学校とで手作りの水辺を創出することとなった。ビニ−ルシ−トを張った簡易な工法であり,水源も水量が少なく,常時流れる状態ではないが,試行錯誤しながら,子供も大人も汗水流して一生懸命作り上げたプロセスが,総合学習の最も重要なねらいであると考える。自分たちで作り上げた水辺にはきっと関心も高く,こだわり続けることであろう。例え,在校中に目標が達せられなくても,その目標が引き継がれ,将来に校庭を訪れてみたときに,水辺が創出されていたら感動もひとしおであろう。地域の愛着はこうしたささやかなことがらの積み重ねによって生じて行くものと考える。地域住民は自分たちの環境として絶えず見守っていくことが期待できる。

 水辺には子供たちによって水辺の植物も植えられ,水生生物を近くの水辺(自然教育園やYRP水辺公園など)から移植している。この移植に当たっても博物館で適切な方法と配慮を現場において指導しながら実践された。しかし,この簡易な方法は水もれなど長期にわたっての対応ができていないので,近い将来はきちんとした改善を必要とするであろう。そうした改善を含めてこれからは,子供たちが自ら考え,水辺の改善を図っていくことと思う。子供たちの活動を地域と学校,博物館をはじめとする行政がどのように支援できるのかが問われている。


 上の文は,総会の話題提供の参考にと著者から届けられたものであるが,事務局からお願いして掲載させていただいた.次回の総会の話題提供の「総合的な学習と博物館」は,大場氏が提案されたテーマである.この文がその提案の趣旨説明になっているし,総会案内に含まれる講演要旨で言い尽くせない部分を理解してもらえると考えたからである。(事務局)


巡回展示の呼びかけ

河合 正人(あやめ池自然博物館)


 昨年の総会後の懇親会の席で、私は、自己紹介の時「助けてほしい」という言葉を発したのだが,恐らくその事情は伝わっていないであろうと推測される。泣き言はあまり耳にしたくないのが,当然の事であるので、改めて耳を傾けてもらい易い方法として,こういう形で提案をしたい。

 一般的に言われている巡回展示は、遠くてなかなか見に来てもらえない人に、いわば「展示の出前」をするといった認識のものであるかもしれない。より広い地域で、展示物を見てもらう。それぞれの博物館活動を、より広い地域の人に知ってもらう。出版物ではなく本物を提示する機会を増やすという効果が期待できるのが、考えられる利点の一つであろう。私がここで提言したいのは、そういう正道論より、長所や短所の他に期待するものがある。少ない労力で大きな回覧を期待するというのが主要な狙いであるし、もっと非本質的な狙いもある。

 いろんな所から特別展などの案内をいただくが、めったに行けない。近距離でも時間が無い。まして遠距離では、その機会はゼロに限りなく近づく。何かの弾みで見ることが出来た、というのが実情である。展示効果、特に、集客効果はよくわからんが、通常の特別展示の場合、自分の博物館の展示(に限らない)だけど、期間が1〜3ヶ月に限られるのが普通である。それが、自分の所でも展示をしてくれるとなるとありがたい。もちろん、まともに取り組めば、展示の場所、設営能力、また移動の問題と設営の条件はいろいろ出てくる。更に効果のある期間を考慮することも重要だ。ある時期には効果的でも、1年後とか夏物を冬にやるとか、時期がずれれば効果の無い展示もありそうだ。特別展示とは限らないのがコツで、ここでの話は、むしろ、常設展示の一部を、いろんな場所で紹介してみるという試みである。

 よその博物館の事情が、あまり良くわからず、総論を述べるだけの見識にも乏しいので、私の都合からのみの話を展開させる。こういう交流がうまく進めば、費用の問題で有利である。自分の館で企画・実行となると、計画が通らないことがほとんどだが、既に出来上がっているものを借りるとなると、話が早いし、その分、障害が少ない。本物の学芸員、博物館ならそんな借り物は避けたいのは当然だが、そこは別の利点にも目を向けて、話を聞いてほしい。

 他の博物館との付き合いの中でも、特別展示として活用できる条件がある。見学するだけでは、そこが見せようとする部分だけしか見えないが、特別展を動かすとなれば、その企画段階からの動きが見られるし、それぞれの博物館の方式がよくわかる。展示を持っていく方も、受け入れ側のいろんな事情がわかる。私の都合を述べれば、他人には信じられないことと思うが、他の博物館を訪問することにより、学芸員がどういう仕事をしているのか、博物館はどんな機能を持っているのか、ということを知る機会になり、大きな勉強になる。25年余りも勤め、定年まで10年を切る学芸員がまさかと思うだろうが、私はそんな程度の、まるで学芸員資格取得コースの学生のような事情であるし、特異な部分の突出でかっこつけているだけで、日常の活動に関してはともかく、大きな仕事においては、まともに吟味したら学芸員資格なんてぶっ飛ぶはずの心細い存在である。あやめ池自然博物館だって、相当施設は返上しなければいけないレベルであって、何を、どのように改善するべきなのか、大きな仕事しか見えない遊園地や会社に説明する大きな力と機会になる。

 ところで、私の特異(得意ではない)な分野であるが、あやめ池自然博物館での実績として、直翅類の偏在とややマニアックな構成、また『直翅類の総て』などというタイトルには向かないが、別の展示の一部として挿入すれば「ヘエ〜、こんな特徴があるのか!」、「ホウ〜、こんな視点から見ると、こんなことが見えてくるのか!」と思わせるような補強的な添加はできる。展示また昆虫一般の普及活動においても『公園の虫』とか『踏み潰された虫たち』、『どんな所で、どんな状況で虫たちが死んだのか』といった無視されやすい虫たちをピックアップする展示が用意できる。

 あやめ池から貸し出したものについては、私の立場からすると、日常は、バカにされているような展示趣旨を、博物館を見に来る人たちに、それもメインではなく、補助として見ていただく事になり、より正しく内容を理解してもらえるチャンスである。ごくごく稀であるが、あやめ池自然博物館のオンボロ展示を「他の博物館より好感が持てる」といってくれる観客がいるのであるが、遊園地の中の博物館では全く通用しない話題である。

 私の立場・略歴からすると、人気より内容に重点を置くことが許されるハズ(そうではなくってきているらしいが、)の公立博物館が『驚き』を前面に出すような展示をすることには、許せない思いでいる。

 あやめ池博物館の場合,それだけで1回分の特別展示を提供する力量は無いが、小さな規模で,一部をアレンジしながら巡回展示を進めると言う形式なら,その交換の一部に利用したり,準常設展示(季節展示というのが適切か?)などに一時利用する『部分展示』は提供できるだろう。逆に、他の博物館の展示を借りる場合でも、他館の特別展示会場にも満たないかもしれない程度の面積が全展示場(建物全体としても約270・)であるあやめ池自然博物館では、他で企画した特別展をそのまま借り入れるのは無理である。考え方によってはコマーシャルビデオや予告編のような感覚で、特別展示の一部を抜粋して借りる方がうまくいく。ちなみに、あやめ池自然博物館は年間入場者数にして1000人程度がふさわしいくらいの小規模博物館でありながら、年間100万〜80万人の入園者数のある遊園地内の無料施設という条件のため、年間で延べ約10万人の入館者がある。いや通過するといった方が正しいだろう。その大半が博物館に入館するという意識はないのである。つまり、通常は博物館なんかには用事がないと考えている人たちが、たくさん訪れる博物館なのである。扱いようによっては、通常博物館に縁の無い、博物館なんか見向きもしないようなタイプの人たちに、博物館の展示を見せる、手っ取り早い方法として活用できる条件がある。逆に、こういう施設は、大向こう受けする派手なものや奇をてらったものを『飾る』のがふさわしく、人が忘れがちなものに光を当てたいという傾向がある私の性格には不向きな立場にある。こんな私を援助して、超ド級の初心者向け博物館を活用する機会を考えて貰えないであろうか?また、あやめ池自然博物館の資料や学芸員は、他で使えば、もっと活用の仕方もあるということを示す機会を作ってもらえないだろうか?

 巡回展示の希望は以前からあって、具体的にどのような考え方を出すのかというまとめがなかなか進まずにいたが、昨年の「お助け」表明をキッカケに、とにかくこんな提案を1月頃に作りかけていた。しかしその後、動物園事務兼任となるなど急転回があって、とうとうこの記事の投稿が手遅れとなってしまった。

 展示室がみすぼらしいまま、いつまでも改善できなかったので「お客さんに失礼である」という見解から、あやめ池自然博物館は閉館の方向が決まってしまい、この記事はむしろ遺言みたいなものになってしまった。

 昨年の昆虫担当学芸員協議会のテーマは独立法人化に向けての問題であった。その行く末はあやめ池自然博物館の姿である、と総会で発言する機会があったのか、懇親会で誰かに話したのかは忘れたが、それから半年も立たないうちに、もっと先の姿が現れてきてしまった。博物館の必要性を、そして観客の需要を開拓しないと、ぼろ儲け路線に走るか閉館の道が待っている。それを企業の責任として、その姿勢を追及しても「ボランティアでやっているわけではない」「メセナの時代は終わりだ」と開き直られ、逆襲されるだけだ。友の会を鍛えなおすというのも一案かも知れない。博物館の姿勢を理解できる人、さらに私が日常痛切に感じることから提言したいのは、お客さんの中で発言してくれる理解者を増やすことだ。学芸員や協力機関からの批判よりは、利用者つまり客の要求の方がはるかに効果がある。


自己紹介

松本 吏樹郎(大阪市立自然史博物館)


 大阪市立自然史博物館の松本です.昨年の4月より昆虫担当学芸員として勤めています.大学ではヒメバチ科の分類,寄生習性,系統といったテーマで研究をすすめてきました.扱っていたのはマルズヒメバチ(分類)トガリヒメバチ(特にThrybius属の寄生習性),ヒラタヒメバチ(特にPseudopimpla属の寄生習性)といったグループです.現在博物館では膜翅目,双翅目を担当しています.どちらのグループも鱗翅目や鞘翅目などに比べると地味ではありますが,生活史や習性,およびその進化に関しては非常に面白い話題を提供してくれますし,身近な昆虫であるため,博物館への問い合わせが多いグループでもあります.博物館活動,特に普及活動をとおして,これらのグループの面白さを伝えていけたらと思っています.また今後はこれまでのヒメバチに関するテーマをすすめつつ,近畿地方の膜翅目,双翅目のレファレンスコレクションの充実にも力を入れていきたいと考えています.

 数年後にはハチをテーマにした特別展を担当することになりそうですので,当協議会の先輩学芸員の方々にも昆虫関係の特別展・企画展のお話や,アドバイスをお聞かせいただけると幸いです.

 もうすぐ博物館に勤めはじめて1年半がたとうとしています.その間の学芸員の仕事に関しての感想は,分かってはいたことではありますが,小さな仕事がかなりあるということです.電話や来館者の,あるいは博物館のホームページに寄せられる質問は非常に多く,一つのことを集中してやるということが勤務時間内では結構難しいということです.同定依頼,寄贈標本の受入れ,その後の整理なども一つ一つの仕事量は大したことはありませんが,ちりも積もれば...で,なかなか前に進みません.もっと細切れの時間を有効に利用できるようにならなければと痛感しています.

 これまでは他の自然史系博物館を訪れる機会はあまりありませんでしたので,これから少しずつ各地の自然史博物館を見学させていただこうと考えています.立ち寄らせていただいた折りには,よろしくお相手下さい.また「うちの博物館はこれくらいのハチ,ハエの標本を収蔵している」という情報を教えていただけると非常にうれしいです.


第9回昆虫担当学芸員協議会総会のご案内

 今年も昆虫学会大会の小集会として総会を開催します.総合的学習の時間が平成14年度より小中学校で導入され,その2年後に高校においても導入予定です.学社連携のかけ声がますます強まることが予想されます.それぞれの博物館がいかに対応するかを話題提供していただきます.積極的な参加をお願いします.終了後は恒例の懇親会も予定しています.


会場:名古屋女子大学(名古屋市瑞穂区汐路町3-40)
    日本昆虫学会第60回大会A会場
日時:2000年9月16日(土)17:00〜19:00

話題提供:「総合的学習と博物館

1.ホタルの里づくりを通した総合学習への取り組み
大場 信義(横須賀市自然博物館)

 文部省はこれまで授業の枠を越えた総合的な学習(総合学習)を2002年から開始される学校週休二日制に併せて本格的に実施することを位置付けている。こうした背景のなかで,横須賀市内および,近隣の小中学校において既に様々な取り組みが行われ始めている。 これまでも,類似した学習としては夏休みの自由研究などが実施されてきたが,形態的には,その多くは期間が限定され、任意のグル−プ・個人単位の学習であった。こうした学習の対応は博物館ほか関連施設においても可能な限り対応してきているが,今回文部省で打ち出された総合学習はかなり広がった異なる内容であり,その在り方をめぐって教育現場からも期待ととまどいが見受けられ,博物館などの対応施設とその支援体制などが,事前に教育現場と十分な論議をすることが必要と思われる。

 ここでは,平成11年度に総合学習の一環として検討されたり開始もしくは,取り組んだホタルの里づくりを通した横須賀市における事例をあげながら,今後の課題や展望などを紹介する。


2.「総合的な学習の時間」と博物館のかかわりについて
     久松 正樹(茨城県自然博物館)

 「総合的な学習の時間」では,地域の実態に応じた特色ある学習活動の創造が期待されている.また,児童・生徒の興味や関心を尊重し,児童・生徒が主体となって学習のテーマや計画を立てて実践していく問題解決的,体験的学習の場の提供が求められている.

 本年,茨城県自然博物館に隣接する岩井市立七郷小学校では,「総合的な学習の時間」を,"自然博物館との連携により,環境学習を中心として情報,国際理解,健康・福祉などの横断的,総合的な学習を進める"こととした.七郷小学校の1年間の学習プログラムを検討し,今後予想される博物館と学校教育との連携について,特に博物館学芸員の関わり方の立場から考察する.

 「総合的な学習の時間」の実施により担当教師は,児童の持つ多様な学習に対する要求に応えていくために,従来の授業に比較してより一層,博物館等の諸機関との連携を深める必要が生じてきた.授業の事前準備にも,学芸員がかかわるようになる.これらのニーズに応えるためにも,博物館での授業実践の広い公開が求められよう.


3.総合学習に先手を打つ−大阪自然史での取り組み
初宿 成彦(大阪市立自然史博物館)

 教育における学社連携が唱えらるようになって久しい中,「総合的な学習の時間」への取り組みが始まっている.大阪市立自然史博物館では,小学校と中学校の教員向けに「自然史博物館の利用の手引き」をそれぞれ発行・配布(1991,1992年)し,それに基づいた形での学校団体の展示見学も多い.また,約2,000世帯の会員をもつ博物館友の会や様々な研究サークルの会員には,学校の教員の方々も少なくなく,博物館で得られたことを学校の教育現場に活かすことも自発的にされているようである.さらに,本年4月からは主に生物部・地学部のない中学校や高校に通う生徒むけに「ジュニア自然史クラブ」も開設し,学校の勉強で忙しくて博物館から遠ざかる傾向の強い中高生向けに,特別プログラムも開始している.このように,学校教育における博物館の利活用については,それなりの実績を積み上げてきた.

 しかしながら,今回の「総合学習」には,各学芸員も少なからぬ危機感を覚えた.小中学校の学習グループが入れ替わり立ち替わり,博物館にやってきて学芸員にレクチャーを求めるのではないか? 直接的な「指導」を求める生徒たちから,同じような内容の質問が繰り返され,それにその都度,研究室から出て来て答えなければならないのではないか? 現在の16名のスタッフではカバーできないような内容の課題を持ち込まれるのではないか? 「出前授業」の依頼が殺到するのではないか?

 学社連携の重要性については大いに認識している.学校現場での教育活動にも,もちろん貢献はしたい.しかし,受け入れる側として,量や内容に限度があるのは事実である.

 そこで本年6月に,教員と学芸員の懇談会を博物館において開催した.この場で,総合学習についての学校現場の考えや博物館への要望を直接うかがうとともに,博物館から提供できる形(テーマや手順)を示すことで,双方に無理のない学習形態を目指している.その他,テーマ別展示見学会,教員むけの野外研修,副読本(大阪の自然や自然観察法について扱う)の作成,インターネットを利用した学習など,当館での取り組みを紹介する.


4.人と自然の博物館の「総合的な学習の時間」支援事業
  -IT と体験学習-
橋本 佳明(兵庫県立人と自然の博物館)

 近年、子どもたちの自然体験が減少しており、自然のすばらしさや生命の大切さへの関心が失れ、「生きる力」が弱まっていることが問題となっている.文部省は、子どもの生きる力を育むため2002年から学校で自然体験などを重視した総合的な学習の時間と完全週5日制を実施することとした.しかし、 教師や親、あるいは地域社会の大人たちの自然体験や知識も希薄で、「総合的な学習の時間」や「ゆとりの時間」のなかで具体的な教育プランをもてないのが現状である。この問題を受けて、人と自然の博物館では博物館の社会教育機能を学校教育支援に積極的に活用するために学校教育支援プロジェクトを展開している.本講演では博物館の学校教育支援プロジェクトの概要と、そのケーススタディとしてITとテレビ電話技術を活用した新遠隔授業システムによる総合的な学習の時間支援プロジェクトを紹介する.本プロジェクトは博物館を結節点として全国の8校の小中学校をネットし、各校の1年間の総合的な学習の単元として「竹筒トラップによるハチの調査」を実施しているものである.


昆虫担当学芸員協議会ニュース 9号 (2000年9月5日印刷・発行)
発行:昆虫担当学芸員協議会
事務局:大阪市立自然史博物館昆虫研究室
      (金沢 至,初宿成彦,松本吏樹郎)
     〒546-0034 大阪市東住吉区長居公園1-23
     TEL 06-6697-6221(代) FAX 06-6697-6225(代)
     E-Mail kana@mus-nh.city.osaka.jp
     振替口座:00920-6-138616 昆虫担当学芸員協議会


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