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昆虫担当学芸員協議会ニュース2号

Published by Kana on 1992/12/15 (4584 reads)


昆虫担当学芸員協議会ニュース 2号


第1回昆虫担当学芸員協議会総会の報告


 記念すべき第1回総会が1992年9月27日18:00〜20:20に弘前大学教養部で開催されたので,その様子を紹介する.昨年の設立準備会と同様に,第52回日本昆虫学会・第36回日本応用動物昆虫学会合同大会の折の小集会として開かれたもので,会員,非会員を含めて26名が参加した.終了後の2次会にも多数の方が参加され,同じ時間に行われた小集会が他に6組あったことを考え合わせると,たのもしいという印象を受けた.宮武氏の進行で,3人の方により話題が提供された.その内容は本号に掲載されている.詳しいことに関しては,後の記事を読んでもらうことにして,雰囲気を重点的にお伝えする.

 トップバッターの河合氏は,日頃行っている昆虫の観察会を一通り紹介した後,「鳴く虫」観察会を実施する際のテクニックの数々を話された.回覧された大部な資料に盛り込まれた豊富な昆虫のスケッチと思い入れが,参加者を圧倒せずにはおかなかった.河合氏は昆虫だけでなく植物を材料とした観察会も実施しておられるわけで,その日常の忙しさは想像にあまりある.次の木俣氏は親子博物館教室という昆虫と植物の合同観察会の事例を話された.恵まれた施設・コースを使った1泊2日の観察会に参加されたお子さん・お母さんの感激ぶりが目に浮かぶ事例発表であった.ライトに集まってくる昆虫を見て,蛾を中心とした昆虫のとりこになる参加者もいると思われる.最後に話された大場氏は,発光昆虫をテーマに掲げた特色ある博物館活動を紹介された.ホタルの観察会でホタルがほとんど見られなかった時の話は観察会の極意を聞いた気がする.3つの話題に共通することとして,河合氏の場合は直翅類,木俣氏は蛾類,大場氏はホタル類を材料にした研究活動に裏打ちされた観察会を紹介されたことである.そのグループに対する自身の研究と思い入れが参加者に伝わり,内容のある観察会を生むのだと思われる.

 それぞれの話題提供の後,活発な質疑応答があり,持ち時間の2時間をあっという間にオーバーしてしまった.そのため意見交換の時間がほとんどなかった.しゃべり足りない参加者のほとんど(約20名)は,2次会へ向かった.今回の2次会は参加者数がつかめなかったので,事前に会場を予約しておかなかったが,今回ほどの参加者数があれば,次回からは会場を予約しなければならないだろう.

 次回の総会の提供話題は,「週休2日制に関する戦略」という案が提出され,その線で準備が進んでいる.その他のテーマとしては,今回の話題提供に対する質問の多くが,観察会において採集させるか否かであったし,「昆虫と自然」1月号(1992年)の博物館特集で徳島県立博物館の大原氏が問題提起していることもあり,「博物館における採集是非論」も浮上しつつある.

 参加者は下記のようであった(50音順).
市川 憲平(姫路市立水族館)
井上 尚武(茨城県大宮高・茨城県立自然博)
岩佐 智子(クボタつくば研究室)
上田恭一郎(北九州市立自然史博物館)
内田 臣一(琵琶湖博物館準備室)
江川 正幸(青森動物生態研究所)
大場 信義(横須賀市自然博物館)
大和田 守(国立科学博物館)
奥  俊夫(農水省果樹試験場盛岡支場)
長田  勝(福井市自然史博物館)
金沢  至(大阪市立自然史博物館)
河合 正人(あやめ池自然博物館)
木俣  繁(山形県立博物館)
桜谷 保之(近畿大・農・昆虫)
沢田 佳久(兵庫県立人と自然の博物館)
篠原 明彦(国立科学博物館)
杉本 光子(青森市)
巣瀬  司(シラサギ記念自然史博物館)
中谷 康弘(橿原市昆虫館)
橋本 里志(千葉県立中央博物館)
原  秀穂(北海道立林業試験場)
樋口 弘道(栃木県立博物館)
松良 俊明(京都教育大)
水嶋 邦夫(東京学芸大・自然史)
宮武 頼夫(大阪市立自然史博物館)
吉安  裕(京都府立大・農・昆虫)
(報告:金沢)


昆虫を使った自然観察会

河合正人(あやめ池自然博物館)

 話題提供では、当館で実施している昆虫を材料とした観察会の内容をひととおり紹介した後、鳴く虫の観察会の実践例を詳しくお話しした。本稿はその際に配布した資料をもとに作成し、その後の感想も加えた。

1.実施している観察会(季節順)

園内の虫と草の案内…大阪市立自然史博物館の長居植物園案内を参考にした行事。
 要点:近くで短時間の観察。同じ場所の継続観察。その月によく目につく、または代表的な草か昆虫を選んで紹介。テーマに選んだ種類について、その近縁種や生活型の似たものを併せて解説する。草について説明しても基本は昆虫である。…例:つる草につく虫たちなど。
 季節:3月〜11月の各月一回を原則。

桜(樹木)に集まる虫たち
 要点:身近にあって人も虫もよく集まる木。昆虫の世界の構図を解説する。昆虫、樹木を通した季節変化の認識。
 季節:4月〜10月の各月一回を原則。

鳴く虫の観察…昼の例会が1度あるが、原則として夜の行事。
 要点:鳴き声を楽しむ→姿や鳴いている様子に興味を持つ→環境との結びつきを考える。体の構造や、鳴く仕組み、また環境に対する適応の状態などについては、「園内の虫と草の案内」でも取り扱う。
 季節:7月〜10月。8月下旬から10月上旬。

虫の死体拾いと生活跡の観察…昆虫研究者には実践例が多い。
 要点:基本はいろんな虫を集めて見ること。不完全な昆虫標本から虫の名前を調べる。そこにいた虫のランダムな?集積から、その場所の昆虫相を推定する(昆虫化石研究の応用篇)。虫たちの最後を見届ける…数の多い虫たちが消滅していく過程を見つける。
 ☆問題提起…人間による、昆虫界への影響力。
 季節:11月〜12月。

その他
 スケッチと観察…虫の体をじっくり観察。
 ミノムシの模型作り…保育園の絵本がヒント…ミノムシの蓑作りを分析。
 落ち葉の絵画、自然観察の集い、館内学習会、その他。

2.話題提供でお話ししたかったこと

*園内の虫と草の案内
・利点…博物館の近くですませる手軽さが特徴である。
・定点調査、定期調査的な観察会であり、対象となる種類の幅は広い。
・入門的にいろいろなものを扱える。それ故、学校での応用が最も有効であると期待できる。学校団体を重要視する遊園地内施設としては有用な要素である。早春や晩秋ぽ草を対象にすることが多い。

*樹木に集まる虫たち
・最初は「桜に集まる虫たち」で始めた。遊園地内の観察会でよく歩くコースにはサクラの木がほとんど切れ目無く並んでおり、焦点を絞りやすいところに注目した。また次のような利点も考慮した。日本では、サクラは公園など身近な場所で最も普通に見られる樹木であり、しかも集まる昆虫の種類が多い木としても代表的なものである。従って、参加者が別の機会に、自分でも観察してみる時、比較しやすい。いろいろな所で、いろいろな人が同じ物を材料にした観察資料を集めることが出来る。園内の虫と草の案内より限定範囲を絞った季節変化を調べることができる。園内の虫と草の案内では樹木の種類、また樹木に依存する昆虫が欠落する難点を補える。

 以上の二つは、遊園地内の昆虫相と植物相の調査を兼ねており、全体的な環境変化の探索ともなる。あやめ池自然博物館でも他館と同様に、いろいろな場所へ時期を変えての観察会を行っているが、そこでも中心はあやめ池の生物相で、あやめ池の種類と比較して話をすることが多い。その基礎資料を作るのに大切な行事である。

*鳴く虫の観察
・音という特殊な採集・同定法を使う。これは採集や目撃に比べて、個体数の集め易さに利点があり、観察会のような短い時間での環境の評価や比較が楽である。
・「虫と草の案内」「樹木の虫の観察」は植物の種類(分類群単位)との結び付きの観察が多いが、鳴く虫は群落が主で、何を食べているかより「どのような環境と関係が深いか」を観察することが多い。その反映として産卵管の形態、体の構造、色などに注目する。

*虫の死体拾い
・生きた虫の採集ではなく、人に踏みつぶされたり、その他の事故死などで物体化した昆虫の遺体を拾い集めて見る。どんな種類の虫が、どんな死に方をしているのかを検討して見る。
・虫の体から、できるだけ多くの情報を得ることを目的とする。標本の認識の啓発が隠れた狙いである。

*ミノムシの模型
・子供の保育園の本から題材を採ったものであるが、単にミノムシの模型ではなく、ミノムシの種類を特定できるような博物館的処理を心がけた。

*観察とスケッチの会
・絵を描くことにより、昆虫の体を詳しく観察し、また白分の見つけだした特徴を表現する練習をする。
・作品は提出してもらい、展示に使用する。お返しに?作品のコピーに添削指導をして送り返す。
・始めた頃は、野外で昆虫や草をモデルにしていたが、参加者が小さい子ばかりだと、生きたものを描き続けるのが困難で、最近は標本をモデルにし、冬の期間の例会にしている。

 以上の全項目について説明する時間はなかったので、「鳴く虫の観察会」について重点的に説明した。

3.鳴く虫の観察会

1)鳴く虫の観察と分析

・主な狙いは「鳴く虫=風流」という認識からの脱却にある。
・鳴き声の鑑賞→種類により鳴き方が違うことの認識。ここから種類ごとの量的な把握を試みるようにしている。
・また次のような考え方の流れを意識している。
場所により鳴いている種類が異なる=環境により種類が異なる。
→たいてい複数の種類がいてその勢力が異なる→種類ごとの特徴を調べる。
→環境との結びつきを考える→鳴く虫の種類構成の変化を考える。
→スズムシやマッムシは昔から珍しい種類だったのだろうか?
・私が心がけているのは、環境との結びつきに重点を置いた観察であり、鳴き声という信号を採集するので、個体数の多さ、発音による情報量の多さが強みである。

2)鳴く虫の特徴とその扱い方

食性…ほとんど何でも食べる種類が大半。
耐寒性…分布調査の整理をするときの基準
対乾燥…色、艶、体の表面の硬さなどを考えてみよう。
生活空間…体形と色について観察してみる。→クダマキモドキ、クサキリ、アオマツムシ、スズ類などを調べる。これはバッタの方が面白い!
脚先などの特徴について…コオロギ類とクサヒバリ類、カネタタキ類との比較、ツユムシ類とキリギリス類の比較など。
その他…産卵管の構造とその機能について考える。

3)鳴き方について

・昔から親しまれている鳴く虫の特徴
スズムシ、マツムシ、エンマコオロギ、ウマオイ、クツワムシ、キリギリス。
人間の耳になじみやすい。特徴がはっきりしている。
・玄人好み?の鳴き声
カンタン、クサヒバリ、カネタタキ。
・隠れた美声の持ち主
キンヒバリ、ヤマトヒバリ、イソカネタタキ、クマスズムシ、ヤブキリ、ウスイロササキリ、カワラスズ、ヒゲシロスズ。
・変わった鳴き方
タップダンサー(コロギス、ササキリモドキ、マッムシモドキ)。

4)鳴く虫を見つける

・木の葉や草に似た形、色…住んでいる場所の風景は?
植物環境を考えようという呼び掛けである。
・鳴いている姿勢について…何故あんな大きな音が出るのか?
音を響かせる工夫や、交尾行動また住家との関係まで考えることができる。

5)飼育してみることを勧める

・鳴く時間、鳴き方の違い、餌その他の習性をじっくり観察して見る。注意:自然の状態ではなく、特殊な条件での反応であることを忘れない。野外観察で確かめるべきであるが、その予想を立てやすくなる。以上のような鳴く虫たちの特徴を踏まえて観察会の実践を考えて見た。

6)実践例

・準備
◎いつごろが良いか?
一般的には8月下旬から10月上旬
8月…10日ごろから主要な鳴く虫が出揃う。
9月…鳴く虫たちの最盛期。最も種類が多く、元気が良い。初心者は多すぎる鳴き声に混乱をきたす恐れあり。
10月…かなり種類が減るが、主要な虫たちは健在。鳴き声の鑑賞には最適。コオロギ類の鳴き声が最も耳になじみやすくなる。急な気温低下などで、当りはずれが大きい。
11月…昼間行うと、環境を把握しやすい。夜は、気温低下で、観察会にならないことが多い。
◎場所の選定
川原…最も代表的な環境…昔からおなじみの鳴く虫が多い。
公園…安全で、鳴き声を聞き取りやすい。種類に物足りなさあり。
ハイキングコース…いろんな環境の違いが見られる。夜は危険を伴う。
住宅街…ちょっと変わった趣向。種類が少ないが意外な発見もある。
◎何時頃が良いか?…一般的には20時前後が、最も活動が盛ん。10月以後は要注意
・現場での観察…一斉に鳴いていて、混乱するのが普通なので、以下のような特徴が観察できるようなときに、声を掛けて、特定の鳴き方(種類)に注意を向けさせることが必要であると思われる。
◎鳴き方のパターンを聞き分ける
連続…シバスズ、カンタン、クサヒバリ、クサキリ
断続…マダラスズ、ツヅレサセコオロギ、オナガササキリ
不規則…エンマコオロギ、セスジッユムシ
☆応用…スズムシ、マツムシ、カネタタキ、クツワムシ
◎虫の位置を考える
頭の上方、耳の高さ、足下(地面)、どの方向から聞こえて来るのか?
上方…頭の上の方…カネタタキ、アオマツムシ、ヤブキリ、ホソクビツユムシ、クダマキモドキ類。
耳〜腰の高さ…カンタン、マツムシ、クサヒバリ、ヤマトヒバリ、オナガササキリ、ササキリ、セスジツユムシ、ウマオイ類、キリギリス。
地面近くから…コオロギ類(種類も数も多い、またよく鳴く)、スズ類、スズムシ、ヒメギス。
◎鳴いている種類を特定してみる→場所を認識して、その環境を考える。
◎鳴いている虫を探してみる→虫の種類の確認。姿の特徴、姿勢、様子を観察。環境との結びつきを考えて見る。
鳴く姿勢…キリギリスとコオロギの比較。翅の使い方、特に共鳴箱の効果。
コオロギ科のコオロギ類とマッムシ、カンタン類の比較。翅を立てる角度。
◎採集してみる→→→行動の特徴を観察。逃げ方など。体の構造の特徴。耳の位置、発音器の構造、脚の構造などを観察。鳴く仕組みや生活などを考えてみる。
・変化球を投げてみる(違った話題について)
◎鳴き方のパターンの違い
エンマコオロギ、ツヅレサセコオロギ、ミツカドコオロギ
…♂の存在、♀の存在などによる鳴き方の違い。種類による口説き鳴きの違い。
あまり科学的な比較ではないが・・エンマコオロギでは♂に対しては鋭い威嚇音を、♀に対しては甘くやわらかい誘惑音を発する。これに対しツヅレサセコオロギでは♀に対しては通常のリズミカルな鳴き方と全く異なり、ひっかかったような発音になる。ミツカドコオロギでは音が短く不完全な感じの音になる。これらを比べて、エンマのプレイボーイ派、ツヅレサセの純情派、ミッカドの硬派などと形容すると、喜んで聞いてくれることが多い。
◎音の高さと聞こえにくさ。音域の違いなど。カネタタキ、クマスズムシ、ツユムシ類の鳴き声が聞き取れるか?→年齢が高くなると高音が聞き取れにくくなると言われる→年令のバロメーター?
◎温度変化を考えてみる…聞こえ方が変わる。
季節の違い…ツヅレサセコオロギ
「肩差せ裾差せ、寒さが来るぞ」と鳴くという話しが、特に高齢の女性には受けるようである。(私は、あまりこういう話しはしたくない)
夜と昼の違い…オナガササキリ
温度差が大きいと、同じ日でも全く違う種類の鳴き声に聞こえる。

7)鳴く虫からの考察(まとめの時に考える)

・音の仕組み
周波数、リズム、音量について
羽を震わせる速度、回数と音の発生
トレモロ(カンタン、クサキリなど連続音)、
チャープとパルス(コオロギ類の節回し)
・体色と模様…同じ種類なのに緑と茶色のものがいる。
体色2型と生活型。森林性と草原性について比較。イネ科の草の葉、木の葉と比べて見る。
・環境との関係…環境指標について
産卵場所の問題…幼虫の食べ物に近い所に産卵するのが通常の形。
バッタは一般に土の中。キリギリス亜目では特別な結び付きを持つものが多い。産卵管の形状に注目。
自然食性…飼育の時にはリンゴが便利だが…種類に応じて草や枝を与える。チョウ・ガの仲間では…植物の種類→科学成分の制約が大きい。直翅類では…硬さなどの物理的要因、環境要因、成虫の活動範囲の影響が大。成長に伴う変化(キリギリス、ヤブキリの例・春の花→硬い葉→捕食性のある肉食)
走光性と走地性
明るい所へ出て行く傾向…キリギリス類、バッタ類など。
暗い場所をこのむ傾向…コオロギ類、森林性の種類一般。
採集時の反応はどうか?
当日の集会の話題提供はここまでであった。

4.参考…自己感想

 こんな声も聞こえてきそうに感じる。「鳴く虫は風流を楽しむものである。そもそも美しい鳴き声を楽しまずして何が鳴く虫の観察か」という批判が出るのが私自身の大きな不安である。それも忘れてはいけないことである。一般対象ではこの点に重点を置き、環境との関連は隠し味程度が正しい紹介のしかたかもしれない。昆虫全般についても子供の遊び相手としての価値を無視したり、美しさや、オモシロサを楽しまずして、何が昆虫の観察かという声があっても、それもまた当然である。一方で、大事な農作物や植木を食い荒らす虫どもを、何を大事そうに観察しているのかとバカにされても、これもまた無理無い話である。しかし、自然博物館が主催する自然観察会では、昆虫たちのこういう扱い方も、もっと堂々と発言しても良いのではないかと思うのである。

5.理想と目標(当日はこれに触れるまで、話しが進まなかった)

 昆虫を対象にした自然観察会というと、内容的に子供を対象とした行事と理解されているが、あやめ池自然博物館では、最近の傾向として大人にも参加できることを心がけている。しかし、大人を対象に意識すると言っても、その内容はマニアックな内容でも、経済的な効果があるという内容でもない。
*昆虫に対する認識を一般的なものへと広めることが目標である。
*マニアが喜ぶ内容?→→珍しい採集地の案内。珍種の採り方。特殊な採集技術の指導。特殊な標本作成の指導などが考えられる。→→これではない。
*応用昆虫学的なものでもない。害虫駆除の方法、実践的、前衛的な研究でもない。写真や絵画を通して、商業的に有用性を研究するものでもない。
*学術的な研究を基礎に置くとしても、調査研究が目的でもない。
☆集客対策としては、絵画、工芸、写真、文芸などで趣味の世界の展開を探ることもある。しかし、商業的に応用可能なものを研究するわけでもない。
注意…実行の上ではかなりの余力が必要。また、博物館の活動の本質を大きく逸脱する恐れがあると思う。


【事例紹介】
親子博物館教室

山形県立博物館 木俣 繁

1 教育普及活動(平成4年度)

 私共の博物館では平成4年度の教育普及活動として、次の事業を計画し、実施してきています。
 自然と人間講座(山形の自然再発見) 5回
 郷土と歴史講座(山形・歴史と人物) 5回
 親子博物館教室(親子を対象) 2回
 博物館教室(一般人を対象) 1回
 夏休み自由研究相談日 2回
 高等学校郷土部研究発表会 1回

2 親子博物館教室

 このうちの親子博物館教室について紹介します。

 親子博物館教室を実施するようになったそのねらいとして、その目的を次のように設定しています。
 「親と子が自然観察や採集などの体験を通して、自然のしくみや法則を学び、自然を科学的に調べようとする態度を育てるとともに、協力学習と対話を通して、親と子の関係を高めていくことをねらいとします。」

3 親子博物館教室の沿革

 親子博物館教室を始めたのは、昭和56年度からで、それ以後毎年実施しています。はじめは、縄文人の家を作ったり、土器作り、あるいは化石探し等から始まりました。親子博物館教室で植物採集や昆虫採集・観察等が始まったのは、昭和58年度からでした。

 初めの内は日帰りの日程で、県内の適当な場所を選んで実施していました。昆虫採集にしても、午前中採集して、午後から標本作りをするといったことで実施してきました。昆虫の場合ははっきり採集ということを打ち出して実施しており、そのことは今も変わりありません。ただ一度、昭和63年度に鶴岡市の高館山周辺で実施するとき、博物館に電話があって、「博物館が主催で高館山で昆虫採集会を実施するなんてけしからん、高館山は採集禁止になっているんだ。」と言うような発信人不明の電話がありました。高館山は鶴岡市の公園になっており、植物については採集禁止になっていますが、昆虫については採集禁止になっていないということで、鶴岡市の方にも確かめていたのですが、結局地元の人との不測のトラブルを起こしても面白くないので、その時だけは観察会ということで実施しました。それ以外の場合はすべて採集会ということで実施しています。今年度はまた、鶴岡市での実施でしたが、前回のこともあり、金峰少年自然の家と連絡をとり、自然の家の周辺で実施するということで、採集会を実施しました。今回は別にどこからも文句は来ませんでした。

 平成元年度に神室少年自然の家で実施することになったとき、今後は県内の少年自然の家をべ一スにして実施するのがよいのではないかということになり、少年自然の家との共催という形で実施するようになりました。この少年自然の家は県内に県立のものが4カ所と山形市立のものが1カ所あります。少年白然の家を選んだ理由の一つは、今まで雨天の場合を予想して、公民館などの予約や準備などをする必要があったりしたのですが、少年自然の家を利用する場合そのような心配をする必要がなくなる、また、施設にあるいろいろな設備を利用することができる。少年自然の家から離れた場所に行く場合には少年自然の家のバスを利用することが出来るなどいろいろな利点が考えられます。それに、少年自然の家の敷地の中には観察路が設けられており、その観察路を歩きながら観察や採集が出来るようになっています。雑木林や杉林、草原、山道、渓流、池などもあり、わりに昆虫類も豊かです。

 神室少年自然の家の場合はまだ日帰りでの実施でしたが、その後、その実施状況の反省から、1泊2日で実施する構想が生まれて来ました。次の年の朝日少年自然の家で、さらに飯豊少年自然の家で、今年度は金峰少年自然の家で1泊2日で実施してきました。

 この1泊2日での実施にしても、少年自然の家を利用することでの大きな利点は、なんといっても経費が安くあがるということです。1泊3食付きで保険料なども含めて1人1,500円という金額です。大人も子供も同じ金額です。ただ、朝6時起床とか、部屋の掃除、所内の掃除など時間時間で決められた生活で、窮屈な面はありますが、親と子が一緒に部屋の掃除をしたりなどを見ると、ほほえましい光景ではないでしょうか。それから利点の一つに第1日自の夜に事前学習を実施して予備知識を身につけることが出来ることです。また、プラネタリュームの設置されている所では、それを見ることも出来ます。

4 金峰少年自然の家での実施状況

 今年度は鶴岡市の金峰少年自然の家で実施しました。その状況を申し上げますと、6月13日午後3時から4時まで現地で受け付け、日程に従って進行しました。日程の中からいくつか拾ってみますと、午後6時30分からの学習活動は、事前に予備知識を学習するために実施するものです。最初に子供達同士お互いに自己紹介をします。学校名、学年、氏名、どんなことが好きか、といったようなことを話するわけです。2日間一緒に行動するわけですから、お互いに早く友達になろうということです。そのあと、準備した昆虫の標本等を見ながら、名前を覚えたり、どんなところにいるか等といったことを予備知識として学びます。この時使う標本は、下見をした時の感じから、今の季節にどのようなチョウやトンボ、甲虫、その他の昆虫類が見られるかを予想して準備してきます。大体標本箱で5箱ほど準備しました。このようにしますと、翌日実際に採集したときの理解にいくらかでも役立つと思います。

 学習活動を終えた後は入浴したり、夜間採集の見学をします。私がもともと蛾をやっている関係で、ライト・トラップによる夜間採集はお手のものなので、実際にやって見せて、このような採集の方法もあるのだということを見せるために実施しております。子供達も興味を持って集まってきて網をふりまわしたり手で捕まえたりでさんざんです。手づかみで「はい、先生…」などと持ってこられたりします。希望する人は見て下さい、と言っていたのですが、昆虫斑以外の班の人も集まってきて、ほとんどの参加者が見に来ました。

 翌14日は午前9時に出発して、所内の自然観察コースを歩きながら採集や観察をしました。下見に来たときに何カ所かのポイントを考えていました。そうしたポイント、ポイントで採集や観察をするようにしていました。そのようなポイントの一つでは、アカガネサルハムシのいる場所がありました。図鑑などによると、アカガネサルハムシは葡萄の害虫とされており、実際山ではヤマブドウの葉についているのをよく見かけます。しかし、そこにはヤマブドウが見あたらず、ついているのはマルバマンサクの葉でした。また、別のポイントではジンガサハムシの一種が何匹も見られる所もありました。生きている間は金色にぴかぴか光っている虫も、標本にしてしまうと黒っぽくなって金色が消えてしまうといったようなことを説明しながら観察していきます。昆虫に関心を持たないようなお母さん方にも、こんなきれいな昆虫もいるのだということを知ってもらい、少しでも関心を持って貰うためにそのようなきれいな昆虫のいる所をポイントの一つに選ぶことにしています。

 また、コースの途中にあるため池には、クロスジギンヤンマ、ヨツボシトンボ、エゾイトトンボなどがいます。このため池もポイントの一つに選びました。チョウでは一番目についたのがイチモンジチョウとコチャバネセセリでした。ほかにヒメウラナミジャノメやコミスジ、ベニシジミ、カラスアゲハ、スジグロシロチョウなどが見られました。オトシブミの仲間も観察の対象として面白いので、オトシブミの仲間の多くいるような場所.もポイントの一つに入れておきます。

5 実施する上での留意事項

○下見を充分にしておく
 昆虫類は移動力があり、季節によって生息する種類がちがったり、また、天侯によって全然姿を見せないこともあり、下見をしても当日はその下見どおりということは有り得ないのですが、周囲の環境をよく見ておけば、そこにいる昆虫の種類はおおよその見当をつけることができます。

○下見は出来るだけ本番に近く実施する
 なるべく同じような状態で本番を迎えるためには、下見の時期は出来るだけ本番間近に実施することが良い。

○コースの途中に何カ所かのポイントを決めておく
 前述のようにコースの途中に採集や観察の出来る場所を選んで何カ所かのポイントを決めておく。

○コースの距離は歩くだけで2時間ぐらいが適当
 本番の日程は、午前9時から午後2時までの正味5時間なので、ポイント、ポイントの採集や観察などである程度時間をかけながら、さらに食事の時間などを考え、また、帰ってからのまとめの時間なども併せると、歩くだけで2時間ぐらいのコースが適当に思われます。

○雨天の場合のことも考えておく
 幸い今まで雨にあったことは一回もありませんでした。しかし、やはり雨天の場合のことも考えておかないと万一の場合に困ることになります。昆虫の標本を使っての話とか、いろいろと考えておく必要があります。

 以上今年度実施した親子博物館教室の状況を中心に紹介しました。参加者の中には4年連続で参加している親子もいます。去年は昆虫の方をやったから今年は地学の方をやるんだという親子もいます。お父さんと男の子は昆虫班で、お母さんと女の子は植物班でと、家族で参加される方もいます。そんなことで参加者皆さんから大変喜ばれています。

 いろいろと同じような企画をされている向きもあると思います、参考になるようなご意見がありましたら教えていただければと思います。

発光昆虫を通した特色ある博物館活動をめざして

大場信義(横須賀市自然博物館学芸員)

はじめに

 表題の本論に入る前に、筆者がなぜ発光昆虫を通して博物館活動を展開するに至ったのかについての背景を概略紹介する。最初に横須賀市自然博物館のおいたちを紹介し、次いで筆者が横須賀市自然博物館で昆虫を中心に担当するなかで、特に発光昆虫類の調査・研究活動を博物館活動に活かすに至った経過などについて記す。そして、横須賀市白然博物館のいくつかの活動目標を紹介し、そのなかで筆者が昆虫や発光生物の調査研究成果をどのように反映させようとしているのかといったことを、私見を混じえて紹介してみたい。

I.横須賀市自然博物館のおいたち

 横須賀市自然博物館は、1954年に日本の開国にゆかりの深いペリーの上陸の地、横須賀市久里浜に開館した。当時既にペリー関係の展示ほか自然関係の資料の犀示もなされた総合博物館であった。博物館の立地条件から、資料の調査・研究および教育普及活動の対象地は三浦半島を中心としてきた。しかし三浦半島の自然史を明かにするためには近隣地域との比較、さらには日本列島、東南アジアにおける位置づけが重要である。また、初代博物館長であった羽根田弥太博士は世界的な発光生物の研究と資料収集を行い、世界でもまれな発光生物の展示を行ってきている。博物館創設以来、博物館の使命として、後記する6つの役割をあげ、その達成を常に目標に据えてきた。この一つとして自然保護の観点から馬堀自然教育園を1959年に、および天神島臨海自然教育園を1966年に開設し、自然博物館付属施設として運営されてきている。この2つの教育園では、自然のしくみや動物・植物の生態の観察や学習が可能な場とし、一般市民の活用を図っている。

II.発光生物と羽根田弥太博士

 羽根田博士は発光バクテリアの研究にはじまって、発光魚ほか海産発光生物の生理学的研究から、ホタルや発光ムカデ、貝類ほか陸産発光生物まで生態や発光機構の研究にまでおよび、総括的に研究を進展させている。博士は戦時中にパラオの熱帯生物研究所で発光生物の研究を行ったが、その後シンガポールの博物館に赴任され、当時戦時下であったにもかかわらず、英国のコーナー博士(菌類専門)らと科学者としての親交を深めた(コーナー,1982)。また、戦後には発光化学の第一人者である米国のマッケロイ博士、ジョンソン博士らとともに、第一線で研究を進め、国際発光生物会議を日本で開かれた(Johnson and Haneda,1966)。羽根田博士が世界中から収集された発光生物の資料は横須賀市自然博物館に保管され、特色ある貴重なコレクションとなっている。さらにこの資料を基に、発光生物の展示がなされ、その独自な研究成果に基づいた展示内容は世界に類のないものとなって博物館展示の大きな特色となっている。筆者はこの膨大な発光生物のコレクションと研究業績(羽根田,1985)のなかで、特に発光昆虫を研究対象に選択した。その理由は、発光生物の多くは海に生活し、特に、深海の発光生物の生態解明は大がかりなものとなり、地方博物館としては研究を進めにくいからである。

III.地方博物館としての役割−横須賀市自然博物館の場合

 筆者は次の博物館全体の役割・目標に沿いながら、主として昆虫・発光生物を通し、学芸活動を続けている。

1)三浦半島の自然史とヒトの歴史をわかりやすく展示する。

 発光生物や昆虫部門に限って紹介すると、次の展示を行っている。
i)常設展示「三浦半島の昆虫」
ii)常設展示「発光生物」(発光昆虫・陸産・海産発光生物)
 ホタルの3種については独自の研究成果に基づいて、発光パターンおよびコミュニケーション・システムをコンピュータ制御によって動的に解説している。発光パターンはホタルの模型を作成し、発光ダイオードで点滅させるほか、波形を表示したり、音声表現をしている。
 ホタルに関する調査・研究成果は毎年追加されている状態にあり、これらについては適宜、特別展示などによって紹介をしていきたいと考えている。
iii)企画展示
 日本産蝶類・日本固有の昆虫類・世界の大型昆虫・美しい昆虫などを季節ごとに展示替えして、昆虫の多様さを紹介している。
iV)特別展示
 大野蝶類コレクション「東南アジアの蝶」
 約15000点の寄贈資料を3年間かかって整理登録されたのを機会に、その成果を市民に広く知って頂くために展示を行った。
 博物館の展示は人間活動との関わりも紹介する必要があり、常設展示で表現しきれないことについては特別展示で補うように努力している。博物館における展示は単なるイベントや大衆迎合型のものでなく、調査研究に基づいた独自の主張が込められている必要があると考える。筆者は自然保全の観点からホタルを通し、特別展示「三浦半島の自然」なども企画実施した。筆者は特別展示のありかたとして、i)展示資料は可能な隈り自館所蔵のもので実施、ii)調査・研究活動の成果を反映したものである必要があると考えている。

2)資料を収集して分類整理し、学術資料として活用するとともに永久に保管する。

 白然博物館できわめて重要な機能のひとつとして資料の分類・整理・保存活動があげられる。博物館資料に至る行程は資料受入→登録(資料台帳・カード・標本番号記入)となっている。限られた労力と時間のなかで何を対象とするか、その必然性などを明確にする必要がある。資料は伝統的な乾燥保存方法を基盤としながらも、学術研究の進展に伴って、乾燥標本のほかにも、液浸標本や冷凍標本も必要とされ、発光生物資料については、既にその一部は-40℃で保管している。

3)研究機関としての役割を担う。

 自然博物館は研究活動が重要であり、発光生物・三浦半島の昆虫を通した自然史を解明することが目標の一つである。このためには、やみくもに資料収集するのではなく、ひとつの目標を設定する必要があり、このことが収集資料を特徴づけると考える。特徴ある資料収集活動から、独自の研究を行い、こうした成果は博物館の研究報告に公表している。博物館の研究報告は博物館の研究活動の特徴を端的に示すものである必要があり、独自の編集方針を打ち出すべきであり、学会誌とは性格を異にする。このために、横須賀市自然博物館では、三浦半島とその周辺地域、および発光生物に関する論文を意識的に掲載する編集方針をとっている。このために、主旨に沿った内容の論文の場合には外部投稿も受け付けている。また自然博物館は環境科学にも幅広く対応し、その成果を市民に還元する役割を持つことも重要であり、このために、筆者はホタルなどを通して身近な自然環境の実態把握に努めている。自然資料はその性格から他地域との比較研究が不可欠である。ホタルの調査研究では分布拡散経路や進化過程を知るために沖縄を重点地域とし、10数年に渡り、南西諸島の発光昆虫を中心に生態調査を行ってきている。

4)生涯学習の場と機会を市民に提供する。

 昆虫部門で限っていえば、三浦半島昆虫研究会・横須賀ホタルの会(いずれの会も会誌を発行)・水系環境を考える会などの団体の活動拠点となっている。地域に密着した昆虫観察会・昆虫植物自然教室・教育園教室・講演会・展示解説などを既に実施しているほか、市内の学校・公共施設からの要請に応じて可能な範囲で昆虫や発光生物を通して教育普及活動を行っている。筆者の研究対象とするホタルについては、野外観察会において最新の研究成果を市民に伝える努力を続けている。自然教育では様々な角度から自然を理解するように、他分野と協同で行事を企画することも多い。例えば、水田環境とホタルをはじめとした昆虫類の関係を具体的に紹介する観察会を民俗学部門と協同で実施している。

 ホタルの観察会は毎年飛び抜けて応募者が多いために、抽選とし、1回40名で2回実施、ホタルの映画や生息環境や生態の解説を行ってからホタルを観察するようにしている。土・日曜の18:00から約2時間開催し、子供達に現体験してもらうために、ホタルを手のひらに乗せて観察させている。ホタル観察に際しては懐中電灯には赤いセロファン紙をかぶせてホタルヘの影響を最小限に抑えるようにしている。10年ほど前には、自然生息地で観察会を実施していたが、周辺地域への迷惑(混雑・騒音・畦破損など)のほかホタルの生息に影響を及ぼすことが考えられるようになったために、それ以後は博物館付属馬堀自然教育園を会場としている。そこでは、ホタルの生息環境や水路の具体的な再生例も観察してもらうようにしている。

 このほかにもより多くの市民にホタルに親しむ機会を提供する目的で、参加応募者全員を対象とした教育園ガイド「教育園のホタル」を実施している。

5)学校教育に役立てる。

 自然博物館は学校教育者が利用可能なものである必要がある。専門分野を通して教育関係者の研修会への要請に対しても協力している。

6)自然と文化の遺産を保護する立場に立つ

 自然博物館は自然の遺産を保全するために調査研究を実施して、事実関係を明確にした上で提言することが要求される。都市において、白然の保全の具体的なありかたを探るモデルとして、博物館付属自然教育園が2園設置されている。そのひとつである馬堀自然教育園は、約3.8haの二次林であるが都市部の自然としては貴重である。園内には学習棟があり、全天侯型の自然学習の施設となっている。教育園は野外調査研究活動の場として、また野外自然教育の場として整備され、運営されている。教育園では、三浦半島では次々に姿を消しているホタルをはじめとする水生生物の保護や水系の再生を実施し、その成稟の一部を紹介するために、ホタルの観察会も行なわれている。この園は生きた生物に触れ、学習する場であり、多くの水生昆虫の観察を可能にしている。こうした実践例は市内の自然水系および都市河川の保全と再生に役立てられている。

IV.発光生物や昆虫を通した特徴ある博物館活動の展望

 ホタルをはじめとする発光生物の多面性は、博物館活動を展開する上できわめて素材性の良い対象である。例えば、形態の多様性からみた分類・複眼の光に対する反応などの生理・発光軌跡から個体群の動態などの生態学・光と匂いのコミュニケーションなどの行動学・昼行性や夜行性のホタフレの活動習性・発光反応の物理化学・発光コミュニケーションの進化に対応する遺伝的背景・ホタルの生息する環境の分析から環境科学へ・発光反応の臨床医学へ応用などの様々な分野に広がっていく、優れた素材性を有している。また発光生物、特にホタルは一般に分かりやすく興味を引きやすい対象であり、教育普及活動を図る上で良い対象といえる。学際的な研究や、総合的環境科学にも発展させることも可能である。筆者は研究対象とする発光生物の資料から派生的に広がるさまざまな分野、系統進化・行動学・生態学・生理学・遺伝学・物理・化学のほか環境科学、さらには人文科学にも連携していく必要があると考える。

文献

羽根田弥太 1983. 発光生物. 318ぺ一ジ. 恒星社 厚生閣.
JONSON,F. H. HANEDA,Y. 1966. Bio1umine science in Progress. edited by F. H. Johnson and Y. Haneda. Princeton University Press, Princeton, New Jersey.
コーナー,E. J. H. (石井美樹子訳) 1985. 思い出の昭南博物館. 208ぺ一ジ. 中公新書.
*この小論は1993年1月号昆虫と自然に掲載予定の原稿から抜粋・加筆して改変したものである。


第2回昆虫担当学芸員協議会総会の案内

 来年の日本昆虫学会と日本応用動物昆虫学会の合同大会は4月に行われることになっています.第2回総会はやはり合同大会の小集会として行いますので,ふるって参加して下さい.ついこの間に第1回総会が終わったばかりですが,12月31日が参加申し込みの〆切日ですので,期限内の申し込みをよろしくお願いいたします.

 早い自治体では今年度中に,遅いところでは1993年度中に完全週休2日制に移行するという社会情勢です.昆虫担当職員も労働者として土日に休みたいところですが,一方で土日の入館者増が予想されます.環境問題が重要視される今だからこそ,自治省の3原則指導を打破して,博物館・昆虫館の発展の機会にすべきです.そこで,話題提供は「週休2日制に対する戦略」という共通テーマで下記の3名の方にそれぞれの館の状況をお話ししていただきます.具体的には勤務体制にからむ人員増と普及行事の実施戦略になる予定です.


日時:1993年4月4日,5日,6日の内のどれか(現在大会事務局と折衝中です).18:OO〜20:00(4日,5日)あるいは15:00〜17:OO(6日).終了後に2次会を予定しています.

会場:松本市旭3-1-1信州大学教養部・理学部
 (第53回日本昆虫学会・第37回日本応用動物昆虫学会合同大会の折の小集会として開催する予定)

話題提供:「週休2日制に関するおもしろい話題(戦略)

1.昆虫館の現状 −橿原市昆虫館の場合−
木村 史明(橿原市昆虫館)

2.小規模博物館の現状
長田  勝(福井市自然史博物館)

3.職員の勤務体制と教育普及事業−千葉県立中央博物館の場合−
宮野 伸也(千葉県立中央博物館)

昆虫担当学芸員協議会ニュース2号(1992年12月15日印刷・発行)
発行元:昆虫担当学芸貝協議会
    大阪市立自然史博物館昆虫研究室(宮武頼夫,金沢至)
    〒546大阪市東住吉区長居公園1-23 TEL06-697-6221(代)


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